[社会] 奄美・加計呂麻島(かけろまじま)で大規模森林伐採計画
「島の半分がはげ山にされる」
―奄美・加計呂麻島(鹿児島県瀬戸内町)で突如沸き起こった森林伐採計画を知らせてくれたのは、私が暮らす尼崎の友人だ。「尼崎でも反対運動を展開するから取材して」との呼びかけだった。
加計呂麻島に製紙原料となる木材チップ工場を建設し、船で本土まで運び製紙メーカーや商社に販売する。そのために伐採可能な森林を島の半分と査定し、1700ヘクタールを伐採するという。かなり無茶な計画だ。
調べてみると中国での紙の需要が高まり、原料となる木材チップ価格は上昇中だ。事業主体の大東海運は、台湾資本との関係も深く、中国への輸出も視野に入っているのかもしれない。
日本の商社・製紙メーカーは、東南アジアの森林で材木を切り倒してきた。金儲けのために地元住民を追い出し、自然を壊し、地球温暖化に大いに貢献してきた。木材チップの値段が上がり始めるとついに日本の森林にも手を付けはじめたのか!さっそく調査に入った。
伐採を計画しているのは、大東海運産業梶i本社・鹿児島市)傘下の渇チ計呂麻チップセンター。同社が瀬戸内町に提出した事業計画を見てみた。伐採計画地面積は、町有地と民有地合わせて2900ヘクタール。島全体の47%にあたる。このうち1700ヘクタールを35年かけて伐採する計画だ。土地の一部は購入済みで、月に1000〜1500トンのパルプ原料を積み出すという。
中越パルプ工業、王子製紙、住友林業が主な販売先。中国、東南アジアで紙の需要が高まり、国産チップ材として目をつけたのが、「にほんの里100選」にも選ばれた加計呂麻島だったというわけだ。
1月29日に行われた地元住民説明会では、「環境への配慮も十分行う。雇用確保など、地域活性化へのお手伝いをさせてほしい」などと、伐採のメリットを訴えた。
同社は、伐採による地元のメリットとして、5点を上げた。@老木から若木への再生、A工場操業による雇用、Bマツクイムシの被害樹の無償引き取り、C木屑などの副産物をたい肥として無償提供、D廃車、廃家電などの島外搬出補助―などだ。
奄美も地域経済の疲弊は著しい。奄美出身の大里哲久さん(箕面市在住)が、先日里帰りしたと聞いたので、様子を聞いた。「@街は、シャッター通りなんて生やさしいモンじゃない。A仕事がなくて若い人がいない。B小規模な観光も夏の間だけで、C役所の公務員でも暮らせないので、島を離れ始めている。D自治体も借金があるので、町有地を売りたいのは山々だろう」と語ってくれた。