更新日:2010/03/08(月)
[社会] 大横綱を倒したメディアリンチ
──ジャーナリスト/同志社大学社会学部メディア学科教授・浅野 健一
メディアファシズム・メディア凶乱
大相撲で、歴代3位となる優勝回数25回を果たしたモンゴル出身の横綱・朝青龍(本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ)が2月4日、現役を引退した。朝青龍は、初場所中に起きた泥酔暴行騒動の責任を取った。メディアが大横綱をなぎ倒した。
刑事事件にならなかったのに、「世間を騒がした」ことが問題になった。報道されなければ、ほとんど問題にならなかっただろう。小沢一郎民主党幹事長をめぐる「金」の問題も同じだ。法的責任はなくても、社会的に抹殺される。メディア・ファシズムの時代だ。
朝青龍は引退表明の会見で、「報道陣を騒がした責任をとる」と述べた。代表質問では、記者の「今、心の整理がつかないと思うのですが、土俵での闘いとともに、朝青龍関はマスコミとの闘いというのも、たくさん思い出があったと思いますが、土俵以外の思い出、何か挙げるとしたら、今どんなことがありますか」との質問に、次のように答えた。
「そうですね。記者だって同じ人間だし、マスコミだって同じ人間だし、多少その背中に子どもとか家庭もいるだろうし、やっぱり飯食わせなきゃいけないな、というところもあるだろうし、最初はやっぱり嫌いだったけれども、こういう食っていく世界ではしょうがないなっていうことは、もういっぱい思い出がありますね」
テレビなどの企業メディアは、朝青龍のメディア批判をほとんど伝えなかった。完全な言論統制だ。
相手が弱いと見ると、集中的に攻撃する。メディア凶乱(フレンジー)の体質は変わっていない。
続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。