[社会] 社会的企業(起業)の醍醐味 成長の瞬間に立ち会う感動
──札幌・村形潤
「環境NGO ezorock」代表理事 草野竹史さんに聞く
社会問題の解決を目的として、収益事業に取り組む事業体。「ソーシャルビジネス」とも呼ばれる社会的企業(起業)という言葉を、よく耳にするようになってきた。
北海道を舞台に、10代20代の若者が中心となって環境対策活動を行う団体「環境NGO ezorock」(以下、エゾロック)の代表理事である草野竹史さん(30)に、「職業」としての環境対策活動、そのまなざしの向こうにあるビジョンを聞いた。(筆者)
人が育つ機会の提供
「僕、就職ビビリ組だったんですよ」と笑う草野さん。「最終面接までいった会社も、面接前日に辞退の電話をしたくらい。それに、大学の学生課に『環境系で働きたい』と相談しても、『無いです』とぴしゃり。無いなら作るしかないかな、と」。
札幌市中央区にあるエゾロックの事務所は、いつも大学生を中心としたメンバーが所狭しと溢れかえっている。
活動としては、毎年、石狩湾新港で行われる北海道最大級の野外音楽イベント「ライジングサン・ロックフェスティバル」でのごみ分別ナビゲートに代表される、環境対策だ。ごみの分別によるイベントそのものの環境負荷の低減だけでなく、来場者に日常的に実践できる行動を提案しており、小さな地域のお祭会場でも彼らの姿を見ることができる。
その他にも、オーガニックファームの運営、環境イベントのコーディネートなど、活動は年々、拡大している。
学生と社会人の垣根を越えた環境団体として、草野さんを含む11人で、2001年に立ち上げた同団体が、事業化へ大きく舵をとったのは、06年のこと。
活動は続けつつ、一旦就職した草野さん。仕事は充実していたが、どこか自分の生き方に納得できず一念発起、退職を決意した。草野さんが代表理事に、仲間の事務局長も有給の専任スタッフとしてスタートした。昨年9月には、札幌市の「社会的課題解決推進事業」を受託し、3人の有給スタッフを加えた。
活動の中で、参加しているメンバーの成長の瞬間に立ち会うという。「ああ、自分が普段やっているごみの分別は甘かったなーっていう小さな気づきから始まり、本人が何となくやりたいと思っていたことに『環境』という大きな視点がプラスされた時、彼らは変わりました。エゾロックの活動だけで環境を変えることはできないけど、人が育つ機会は提供できているのではないか。ただ、人を育てることにお金は出ない。継続的に活動を展開していくために、事業プランを立てていく必要がある」と、草野さん。