[反貧困] 「公設派遣村」の裏側
石原都知事の越冬闘争への攻撃を許すな!
昨年12月28日から6日間開設された「公設派遣村」(東京都渋谷区・国立オリンピック記念青少年総合センター)には、予定の500人を越える833人が入所。改めて劣悪な雇用と深刻な貧困の現実が確認された。
前年、労組・諸団体が開設した「年越し派遣村」が、貧困の現実を社会に見せつけ、大きな衝撃を与えた。新政権は今回、「公設」を打ち出し、国が資金を出し、東京都が運営した。
しかし、現実に疎い役人による運営で、多くの問題が生じた。それは、@入所者の面接が身辺調査のみで、生活保護などの安全網についての具体的な説明がない、A「年越し派遣村」実行委員や有志が組織した「ワンストップの会」(年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会)の公設派遣村への立ち入りが禁止され、都との話し合いも拒否された。このため、B入所者は、再び路上に戻ることになるのではないかとの不安を増幅せざるを得なかったという。
こうした中、「(求職交通費2万円を支給した後に)約200人の入所者が無断外泊」という報道が飛び交い、石原都知事は、待ってましたとばかりに「18日打ち切り」を宣言した。公設派遣村を検証する。(編集部)
誇張される「不祥事」と行政の無理解
「無断外泊200名」、「2万円を持って逃亡」、飲酒事件など、公設派遣村を引き継いだ「生活総合相談」利用者の不祥事が、メディアで盛んに報じられている。
東京都は6日、約600名の入所者に『2週間分のハローワークなどへの交通費・昼食代』として2万円を支給した。当初、都は1日分=1000円を毎日支給していたが、長蛇の列で1時間半待ちの事態も生まれたため、ワンストップの会が「細切れすぎる。2〜3日分の支給を」との意見を寄せた。
都が、「事務手続きの軽減」を理由に2万円の支給を決めた時も「2万円は大き過ぎる。お金を落とすなどのトラブルにつながるため、2〜3日分程度にすべき」と忠告した。
これらの経過を見ると、行政マンの利用者についての無理解が痛感される。就職活動や生活保護申請で門前払いされ、路上生活を強いられたあげく、数百円の所持金で駆け込んだ人々だ。2万円の価値は都職員のそれとは違う。2万円を手切れ金と思った人もいるだろう。そもそも都は、「こっちは国に頼まれてやったこと」(石原都知事)と、困窮者の問題解決に知恵を絞るどころか、生保受給者の増加を恐れるという消極的態度に終始している。
こうした都の姿勢と報道に対しワンストップの会は、「200名は事実誤認」として、東京都に正確な数字や経過、さらに都の管理・運営体制の問題点も明らかにするよう求めた。
同会によると、実際の外泊者数は40数名だという。それも外泊の届け出先や宿泊施設本部の電話番号を知らない人が大多数で、外泊者の大半は転出予定地でネットカフェ等に泊まり、アパート探しに走り回っていたという。「大多数の利用者は真剣に努力している」(同会)。