[情報] エリート支配に対抗する「世界社会フォーラム」
──春日匠
おおさか社会フォーラム(10年3月)に向けて
来年3月21日、22日に、大阪で「おおさか社会フォーラム」が開かれる。世界社会フォーラムおよびそこから派生した各種の地域フォーラム、テーマ別フォーラムは今や全世界で活発に行われているが、日本ではまだまだ、聞き慣れた言葉ではない。そこで、「社会フォーラム」がなにを目指したものであるのか簡単に振り返ってみたい。
社会フォーラムは、様々な社会運動の試みの中で生まれてきた手法だ。その一番重要な契機は、99年に米・シアトルで行われたWTO(世界貿易機関)閣僚級会議への大規模な抗議活動である。
シアトルでの活動はしばしば「ウミガメとトラックドライバーが一緒に(Turtles & Teamsters, Together)」と表現されてきた。「ウミガメ」とは、当時WTOが進める規制緩和でウミガメが危機にさらされることが議論されていたことによる。通常、環境保護活動家にとって、トラックは環境汚染の大きな原因であり、逆にトラックドライバーにとっては、環境保護活動など、商売の邪魔以外のものではなく、両者の利害は対立していると考えられてきた。
しかし、シアトルにおける抗議行動では、この両者に加えて、第3世界の貧困問題を扱う団体、様々なマイノリティの団体、アーティストなど様々な立場のグループが世界中から集まり、行きすぎた資本主義に講義して同じデモ隊を組織した。このことが、シアトルが社会運動にとって重要な転機になったと考えられている理由である。
シアトルで行われたことは、単なる「抗議」にとどまらず、人々が地球の様々な場所で抱えている、様々な社会問題を集め、共通の議論をくみ上げ、可能であればその解決に向けて協力していく、という作業であった。逆に言えば、横断的にそういうことを試みる場がこれまではなかったわけである。そこで、シアトルで起こったことを継続していくために、「誰でも集まって、発現できる場所」として「世界社会フォーラム」が構想されたのである。
このとき、一つの「モデル」を提供したのが、スイスの金融都市ダヴォスで行われている「世界経済フォーラム」である。この会議は、数百万円の会費を払える企業経営者や投資家、および「世界をリードする人材」と見なされた政治家や学者など、約3千人が閉鎖された会場で人類社会の方向性について議論するものだ。会期中のダヴォスは厳重な警備の下に置かれ、会場近辺には招待状のある人々以外は誰も入ることができない。
しかし世界は、もっと多くの、権力にも金にも縁のない人々も参加できる場所での話し合いによって決められるべきではないだろうか。そこで、金持ち国の山頂で冬に行われる世界経済フォーラムに対抗し、南の国ブラジルの平原で夏に行われ、誰でも参加することができる世界社会フォーラムが開催されたのである。