[社会] 介護業界における行政─企業─政治家の癒着
──遥矢当(はやと)
崩れ始めた蜜月関係
民主党政権の誕生で、全国各地の介護施設の運営も変わり始めた。これまで多くの介護施設が、地元出身の保守系政治家の影響を受けてきたからだ。
彼らはある意味、地域で公的介護を創り出した存在だったが、同時に介護を通じ、多くの不正や疑惑を生み出してきた存在でもある。自民党が政権与党から退場したことで、介護施設における「地元企業」「行政」「有力政治家」による蜜月関係が、音を立てて崩れ始めている。
今回はそんな介護施設の具体的な例として、東京都日野市にある介護施設「あすなろ」を紹介する。(筆者)
介護施設「あすなろ」
私が東京都日野市の介護施設「あすなろ」を知ったきっかけは、私が勤める介護施設のスタッフ求人中のことだった。送られてきた履歴書を見ると、何人かの最終職歴が「潟Rーワ薬品・介護施設あすなろ」となっていた。この施設は、短期間に大量の離職者を出したようだった。
同施設で働いていた50代の男性は、面接で顔を曇らせ、「あそこのおかげで、夏の暑さに負けて体調を崩し、3ヵ月ほど入院した」と力のない答えを返してきた。彼らは「あすなろ」で燃え尽きた様子だった。
「あすなろ」は、「特別養護老人ホーム」と、「高齢者専用賃貸住宅あすなろ」(*@)の2施設を運営していた。
この施設について、地元日野市議会議員=中谷好幸氏(日本共産党)と、佐瀬昭二郎氏(無所属)の両氏が、「あすなろ」の開設時より、この「コーワ薬品株式会社」(国立市)(*A)が生んだ多くの疑惑について追及を続けており、話を聞くことにした。
法外な借地料の謎
中谷市議…2004年に、市内に特別養護老人ホーム(*B)の新設が決まり、補正予算が組まれ、私も当時は賛成しました。施設を運営するのは、コーワ薬品が設立した社会福祉法人「寿優和会」で、これまで全く施設運営の実績がありませんでした。
私がこの「寿優和会」に疑問をもったのは、社会福祉法人が特別養護老人ホームを立ち上げる際にクリアしなければならない条件を満たしていないことでした。その条件とは、@法人に財産があること、A施設の用地を自前で用意すること、の2つです。
当時、東京都には事業者が施設用地を取得する場合、4分の3まで公的補助する制度があったにもかかわらず(現在この制度は廃止)、「寿優和会」はわざわざ借地に特別養護老人ホームを建設する計画になっていました。しかも借地料は、常識外の高額でした。
私は、なぜ日野市や東京都が計画の段階で、「寿優和会」に対し補助制度を使って基本財産(土地)を確保するようにしなかったのか、疑問を持っていたのです。