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[社会] オバマVS鳩山　「日本は指導されるべきで、沖縄の思いを持ち出すのは筋違い」？！
──ギャヴァン・マコーマック（オーストラリア国立大太平洋アジア研究学院歴史学科教授）

イビツな日米関係

沖縄基地問題に観られる日米関係は、海外の識者の目にどのように映っているのだろうか？戦後、政権党にとって日米関係は、常に最重要課題となってきた。国内の外国軍基地の存在に触れることはタブーで、政治生命を賭ける覚悟がいる。こうした政治風土の中、民族主義者の中にも米軍の存在を歓迎する人は多い。マコーマック氏の評論は、日米関係がいかにイビツか明確に述べる。（『アジア太平洋ジャーナル』09年11月より　／抄訳・脇浜義明／文責・編集部）

ブッシュ大統領と小泉曹長

鳩山首相は日米関係を「従属」から「対等」へ移したがっているが、オバマ大統領は「小泉曹長」（ブッシュ米大統領は小泉元首相をこう呼んでいた）時代の対米従属を維持したい意向だ。

問題の焦点は、沖縄の基地移転である。オバマは、鳩山に「グアム協定」順守を要求している。これは、海兵隊の一部グアム移転と普天間基地の辺野古移転を日本側の費用負担で行なうことを、クリントン国務長官と自民党の中曽根外相が、今年５月に調印したものである。

オバマは、自民党政権の崩壊前に日本を縛っておこうと、先手を打ったのである。これらはすでに、小泉内閣時代に「日米同盟・未来のための変革と再編」や「在日米軍再編に関するロードマップ」で用意されていた協定である。この協定は、�@不平等協定、�A憲法違反、�B法律無視、�C植民地主義的、�D欺瞞、である。

�@不平等‥古典的な不平等協定である。日本側は拘束されるが、米国は議会の承認を必要としない事務的協定にすぎない。日本には辺野古とグアムの新基地建設費用を支払う義務があるが、米側は何人かの海兵隊員を移転させるという、曖昧な約束があるだけ。つまり、拘束力は片務的である。しかも、協定第８条で米国は、いつでも条項を変更できる権利を留保している。

�A憲法違反‥日本国憲法第95条に、「一地方公共団体にのみ適用される特別法は地元の住民投票で決すべきで、国会が制定すべきものではない」とある。グアム協定は、沖縄県に適用される特別法であるのに、住民投票の洗礼を受けていない。従って、憲法違反。

�B法律無視‥まともな環境アセスを行えば、大規模軍事基地建設と大浦湾の生態系維持が両立しえないことは、明らかである。外国との条約は国内法より優先されるので、グアム協定は、日本の環境保護法違反であるばかりか、法律そのものを犯す。

米国では、サンフランシスコ地裁が史跡保護に関して国防省等を被告とする裁判を行なっていて、国家史跡保護法に基づいて国防省に史跡保護命令を出した。

辺野古基地建設に関しても、オバマ政府と日本政府に対して同じような生態系保護命令を出す可能性がある。それで、オバマ政権と日本政府が先手を打ってグアム協定を結び、実行を急いでいるのだ。

�C植民地主義的‥05─06年のロードマップなどの協定が具体化しないことに業を煮やした米国は、あからさまな命令を出した。07年、ロバート・ゲイツ国防長官は、日本にインド洋給油活動再開、米軍基地への財政負担の維持・増額、防衛予算増、自衛隊海外派遣恒久法制定、を命じた。「命令を実行しないと、安保理常任理事国立候補を支持しないぞ」と脅した。

ロードマップを指導したリチャード・ローレス国防副長官は08年５月、朝日新聞に「トップダウン式に日米合意事項を実現できる政府が必要だ。米国との連携に関する決定、動員、統合、作戦立案を早急に実行できる政府が必要だ」と語った。

麻生前首相は、必死になって米国の要望を実現する努力をした。オバマ政権も伝統的対日植民地主義路線に乗って、クリントンを送り込み、グアム協定を結ばせた。彼の対日姿勢は、家父長的、干渉主義的、反民主主義的で、日本が独立独歩することや、アジアや国連中心主義へ向かうことを嫌がる。土着民日本は指導されるべきで、対等な相談相手ではない。沖縄の人々の思いを持ち出すのは筋違いだ、というわけである。

�D欺瞞的‥この協定は、相互性のレトリックで粉飾された欺瞞協定である。主権国家が自国内に他国の軍事基地を作ってやって経費まで負担するなんて、前例がない。

米政府は、グアム移転を「譲歩」と表現しているが、米領土に日本の費用で基地を新設するだけのこと。普天間基地が不便で、危険で、老朽化したので、辺野古にもっと大きくてハイテク完備の基地を作らせる、ということなのだ。

辺野古の大浦湾は、海底が深く、原子力潜水艦の港湾に適しているからである。米の譲歩は何もなく、日本の負担が増えるだけだ。日米政府はこれを「同盟関係再構築」という言葉で粉飾し、国民の眼を欺いている。