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▲通りがかりの男性(白シャツ)が車から降りてきた。「私はかつてCWU労組の役員をしていた。スト、がんばってくれ」と、一人一人握手で激励。

▲労組の張り紙。「皆さんのサービス。我々の仕事」
更新日:2009/12/18(金)

[海外] 英国/郵便労働者全国スト 整理解雇・民営化阻止
──ロンドン在住・小野信彦

マスコミのかまびすしいスト非難

「郵便労働者のストは郵便産業にとって自殺行為」「郵便はかつての炭鉱や恐竜同様に絶滅する定め」「郵便ストは不況回復を遅らせる」─。

今秋、久しぶりに労働運動が、英国マスコミの紙面や画面を頻繁ににぎわせることになった。通信労組CWU(郵便・電話・通信産業)の郵便部門(12万人強)が全国スト投票を実施し、76%もの賛成でスト方針を可決したのだ(10月8日開票。投票率67%)。

もちろん日本と同様、商業メディア報道の多くは、ストを非難する論調である。7月以来、10波以上に渡って闘われていたロンドンや各都市での非合法の地域スト(9月5日号の本紙寄稿で報告)を黙殺し続けた商業メディアだったが、全国スト投票の前後から、かまびすしくスト非難を始めた。

いわく、「ストに賛成したのは(非組合員を含めれば)全郵便労働者の半分にも届かない」(郵政公社ロイヤルメール幹部)、「夏前からの郵便ストは、ロンドン経済に5億ポンド以上の打撃を与えた。もし全国ストが行われたら、新たに3億ポンドの損害となる」(ロンドン商工会議所幹部)、「全国郵便ストは完全な自滅行為であり、多くの人々が郵便以外の通信手段を使うようになるだろう」(政府郵政大臣)、といった調子だ。

公社当局、大資本、政府幹部の声ばかりが喧伝され、その一方で、ストを選択せざるをえなかった郵便労働者の声が報道されることは、稀であった。

ストライキの理由はどれも重い問題だ

多くの場合、「仕事、賃金、産業近代化、サービス」、と簡潔にしか説明されないストの理由だが、その一つ一つが実に重い。

@過去7年に、当局は5万3千人もの整理解雇を行ってきた。これからも多くの正規雇用者を、パートや非正規職に置き換えようとしている。このストは、雇用を守るための闘いだ。

A当局は、既に7千の郵便局を閉鎖し、これから更に2千5百もの局を閉鎖する計画だ。全国ストは、郵便サービスを守るための闘いだ。

Bこの間当局は、組合との協約を踏みにじり、組合との事前協議を一切行わずに、労働環境の変更を強行しようとしてきた。このストは、労働者の権利を守り、組合無視・組合潰しを許さない闘いだ。

C多くの郵便労働者の賃金は、肉体労働者の平均賃金よりも低く、残業でなんとかやりくりしている状況だ。

一方、公社トップにして整理解雇を叫ぶアダム・クロウジァ本人の年収は年360万ポンド(約6億円)であり、これは一般郵便労働者の実に180倍もの額である。更にクロウジァは、03年の就任以来、整理解雇の成功報酬ボーナスとして総計240万ポンドもの大金を手にしてきた。こんな人物の推進する政策を、認める訳にはいかない。このストは、労働者の満足いく賃金(ディーセント・ペイ)を獲得するための闘いだ。

D読売新聞等の日本マスコミ大手は、06年1月の英国郵便市場「完全自由化」を、無知か故意にか「民営化」として報道してきたが、いまだに英国ロイヤルメールは、政府が100%所有する完全国有の公社であり、民営化をもくろむ労働党政府と、阻止のために闘うCWU労組との間で、激烈な闘いが続いている。

実は、先述の大量整理解雇等々の動きも、全てが民営化を見越した当局の先制攻撃なのである。

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