[反貧困] 『札幌のホームレスを知る』市民報告書 大きかった調査する側の変化
──札幌・村形潤
地方からのレポート
「地方の動き」を定点観測として定期的にレポートして頂くことで、都市からの視点を相対化したい。東京も大阪も所詮、日本の断片・一地域でしかない。にもかかわらず、東京は日本を、大阪は西日本を代表するかのような錯覚を、我々自身も持ってしまっている。こうした錯覚は、農村を視界の外に追いやり、大都市中心の歪んだイメージを形作る。
多様な日本の本当の像に近づくために「地方からのレポート」を定期欄として新設した。第1回は、冬の北海道のホームレス事情だ。全国各地の読者の皆さんにも定期的寄稿をお願いしたい。(編集部)
厳寒の地のホームレス
雪がチラチラと舞う季節になってきた札幌。これから厳寒の真冬を迎える北海道にもホームレス(路上生活者)がいる事実を、知っているだろうか。この北の地の冷えた空気のなか、深夜シャッターが下ろされた地下鉄の入り口で、駅のバスターミナルの階段で、公園で、公共の地下通路で、今日も誰かが暮らしている。
2009年1月の「ホームレスの実態に関する全国調査」(厚生労働省)によると、札幌の路上生活者の数は99人にのぼる。ただ、これは冬場の目視による調査であり、「定住型」ではなく、「移動型」のホームレスが多い札幌の場合、実際の数はそれより多いと言われている。
反貧困プロジェクト
その札幌のホームレスの現状と概要を市民の目でまとめたのは、NPO法人さっぽろ自由学校「遊」の「反貧困プロジェクト」のメンバー。このほど『札幌のホームレスを知る』と題した市民調査報告書をまとめ、希望者に配布をしている。
公募した一般市民40人の参加者を集めたこの市民調査の意義と、調査における葛藤や思いについて、プロジェクトリーダーの細谷洋子さんにお話を伺った。
「札幌駅のホームの冷たいタイルの上で寝ているところを実際に見るのと、研究者が調査した内容を机を並べて聞くのでは、大きく違う」と細谷さんは言う。
今回の調査では、事前に学習会を開き、地元の支援団体が行なっている炊き出しや夜回りにメンバーが同行し、札幌の路上生活者に話を聞いたり、交流し理解を深めるための食事会などを開いた。
《派遣の仕事がなくなってしまったという若い人、大工や電気工事関係の仕事をしていたという人、わずかな年金はあるけれど、部屋は借りられない、生活保護は受けたくないから路上で、という年配の女性、など抱えている事情はそれぞれに違う。働きたいと考えている人もいれば、長い路上生活で働くことをあきらめているのか、このままでよいという人もいる》(報告書からの引用)