[政治] 自衛隊インド洋給油活動は「通り魔に刃物」
──西谷文和(イラクの子どもを救う会)
激化する対米レジスタンス
アフガニスタン侵攻=「不朽の自由作戦」から8年。いまだに同国は混沌の中にあり、無辜の市民が殺され続けている。先の大統領選では、カルザイ陣営の大規模な不正が公式に認められたが、彼と米軍の支配地域は、首都周辺のみで、全領土の1割程度。他の地域は、タリバンが実行支配しているという。
一方、毎月2000億円と試算されている占領費用は、増加の一途をたどっており、米国内にも厭戦気分が広がっている。先月、同国とイラクを取材した西谷文和さんの現地報告を掲載する。同氏は、自衛隊によるインド洋での給油活動を「通り魔に刃物」と形容する。(編集部)
岡田外相の電撃訪問─民政支援への転換を─
10月7日早朝、カブール国際空港に到着。空港正面にはカルザイ大統領の大きな肖像画、そしてISAF(国際治安支援部隊)の軍用ヘリが駐機している。
空港を出て、カブール中心街へと向かう。3ヵ月ぶりのカブールは、明らかに街の様子が違っていた。まず、コンクリートの壁が増えた。自爆攻撃を防ぐための要塞である。そしてイラクでも見かけたのだが、不気味な無人飛行船が上空にプカリ。米軍が、市民生活を監視するために24時間飛ばしている監視船である。
カブールで最高級クラスのセレナホテルで、現地視察に来ている社民党の阿部議員、服部議員と面談。インド洋の給油に代わる民生支援のあり方を調査するため、現地に来られたのだ。あらためて、政権が交代したことを実感する。なぜなら、自公政権ではインド洋での給油が自動的に延長されていただろうし、「危険」といわれているカブールに滞在し、現地調査する議員も出てこなかっただろうと思うからだ。
この日は議員だけでなく、朝日、共同、読売新聞など大手紙の記者もカブールに駆けつけていた。翌日の8日で、米国ブッシュ大統領による「不朽の自由作戦」が始まって丸8年が経過する。さらに、8月20日に行われた大統領選挙の結果が、もうすぐ発表される。
このタイミングでカブールに来たのは正解だった、と感じながら、各紙記者と情報交換していたら、なんと岡田外相が11日にアフガンを電撃訪問するとのこと。私のようなフリー記者でも、ここはアフガンである。記者クラブはない。岡田外相の訪問に備えて、アフガン政府から取材許可を取り付ける。
10月11日午前10時半、数台の黒塗り防弾車がすべるようにアフガン外務省に入ってくる。周囲には警官と政府要人。物々しい警戒の中、岡田外相が姿を現せた。スポンタ外相と握手。いっせいにたかれるフラッシュ。岡田外相にぴったりと寄り添うのは、腕に刺青を入れたイギリスの民間軍事会社の警備員だ。
残念ながら、外相対談を撮影するのは禁止された。握手と挨拶のみが許可される。この後、外相はカルザイ大統領と会談し、地元の小学校を視察するという。
地元小学校で外相を待つ。小学校は男子校で(イスラムでは男女別々)、少ない教室に子どもたちがひしめき合っている。教室が足らないので、一部は天井がない青空教室で、先生は女性が多い。
外相が到着し、一つひとつの教室を回る。「日本って知ってる?」と聞く外相に、子どもたちが首を振る。「教科書は足りてる?」「教科書はあります。でも教室が足りません。特に冬が寒いので、ストーブがほしいです」と上級生。穴が開き、隙間風が吹く教室。冬は氷点下15度まで下がるので、勉強に集中できる環境ではないようだ。
ひとしきり小学校を視察した外相は、風のように黒塗り車で去っていった。
インド洋の給油に代わる民生支援。それは、おそらくこうした小学校への援助や病院、農業、女性の自立など、一般の人々への支援であるはずだ。一刻も早く米軍への給油をやめ、こうした民生支援に切り替えるべきである。岡田外相がそうした「チェンジ」の旗振り役になってくれることを願う。
自爆攻撃に遭遇─石油利権とパキスタン・タリバン─
カブール訪問初日に、3ヵ月前と比べてかなり治安が悪くなっていると感じたが、その心配が現実のものになった。私の宿泊する安宿のすぐ隣で、自爆攻撃が発生した。
10月8日午前8時半、インド大使館の前で一台の車が爆発。通行人、警官、写真店店員など15人が犠牲になった。
現場へ急行する。病院のベッドに、次々と重傷者が運び込まれる。患者の体にガラスが突き刺さっている。漫画「はだしのゲン」で体にガラスが突き刺さった被爆者が描かれていたが、同じである。空爆や自爆で恐ろしいのは、「破片」なのだ。すさまじい勢いで飛び散る鉄やガラスの破片が、凶器になる。
自爆地点へ。現場には大きな穴が開き、数十軒ある写真店、コピー店は粉々に砕け散っている。この場所はインド大使館に提出するビザ申請用の写真や書類を作成するための店が並んでいて、そこの店員や警備する警察官が犠牲になったのだ。
犯人はほぼ間違いなく「パキスタン・タリバン」だ。インド大使館とビザ申請する外国人を標的にしたものと思われる。おりしもパキスタン・アフガン国境地帯では、パキスタン軍による空爆が続いていて、タリバンの武装活動が活発化していたときだった。