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更新日:2009/12/08(火)

[海外] アメリカ/衰退したアメリカ経済の治療法─それは大金持ちへの増税だ!
──シィムス・クーク(グローバルサーチ研究員)
http://www.zmag.org/znet/viewArticle/22272

経済危機が引き金に

アメリカで、改善が必要な社会問題は、健康保険だけではない。州予算危機、失業、インフラ(社会の基本設備構造)、教育、住居、食糧援助などなど、枚挙にいとまがない。

しかし、そのために必要な公的資金が、あまりに不十分だ。「12兆ドルの国家債務を抱えるアメリカにとって、成就可能なものは何一つない」と、過去多くの政治家が、国民に信じこませようとしてきた。

だが、今回の経済危機は、忘れられていた基本的な議論を呼び戻すことになった。ようやくメディアや政治家たちが、論争を引き起こす問題点を取り上げ始めた。すなわち、「高額所得者にもっと課税すべきではないか? 課税するなら、適当な額はいかほどか?」。

論争は、一般にも広がり始めた。アメリカで社会的不平等は、広がり続けてきた。現在、国民の大多数は収入のゆとりゼロ。数百万人が、年収以上の借金を抱えている。税金を払える余裕があるのは、富裕層だけだ。彼らは税金が上がっても生活に困ることはない。金持ちは、貯蓄から税金を払う、生活費を切り詰める必要はないのだ。

今、金持ち層に対する高額課税を始めなければ、社会の崩壊は免れない。カリフォルニアがいい例だ。シュワルツネッガー州知事は「カリフォルニアの州予算の赤字は、増税なしにバランスを保てる」と宣言した。増税の代わりに、教育費、保険、福祉予算が大きく削減された。結果、労働階層、貧困層は、大きな重荷を負わされることになった。かつての大恐慌に逆行しようとしている。

金持ち層の逆ギレ

大恐慌の下、抑圧された労働者の反乱は、金持ち層への増税を促す大きな社会的な力となった。結果、金持ち層に対する課税率は、1929年に24%だったのが、1936年には79%になった。

その後も金持ち層への増税は続き、90%まで上がった。累進課税は、レーガン政権による「負の税革命」まで続いた。彼は、一般国民の所得を劇的に下げ、共和・民主両党の支持を得て、金持ち層への税金を70%から33%まで下げた。

オバマは大統領選挙で、ブッシュの「高額所得者減税」の廃止を公約として掲げた。わずか3%ばかりの増税は、エリートたちを激怒させた。彼らはメディアを使って、「オバマは社会主義者だ!」という焼印を押すことで、怒りを爆発させた。

この増税反対キャンペーンには、毒と脅迫が含まれていた。もし億万長者や大企業に高額課税すれば、彼らは大金を抱えて海外に出て行ってしまう。そうすれば仕事も失われ、経済破綻が起こるだろうと。

だが、億万長者達はすでに脱税のプロであり、大企業は政府から報奨金、税控除、オフショア無税天国など巨大な恩恵を受けていることを忘れてはいけない。いい例が億万長者=ルパート・マードックだ。彼は、株収入の17%しか納税していなかった。

税制改革と共に法の抜け穴を埋めれば、キューバやベネズエラの金持ちがマイアミビーチに犇めくように、金持ちの海外流出を招く恐れはある。だが、それを怖がって、更なる破綻を前に、立ちすくんでいていいのだろうか。

もし、そのような事態が起こったら、資金の凍結、所有財産の没収をすべきだ。厳しすぎると思われるかもしれないが、彼らの富は正当性がない資産であることを考えてほしい。彼らは、労働者の給料の大幅切り下げ、福祉の切捨て、住宅バブルでの大儲け、金融投資、そして不況の到来以降は、政府の金融救済によって、この何億何兆という富を得たのだ。彼らは何百万という人々を破産に追い込み、その奪った金を持って、海の向こうに逃げようとしているのだ。

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