[政治] 地方行政と議会の無責任なもたれ合い
──豊中市会議員・木村真
今後大きな政治的テーマとなる地方分権
「地方分権」についての継続的な論議の場をスタートさせたい。分権論議が総選挙のテーマの一つとなったことは、橋下大阪府知事ら「首長連合」の功績である。しかしその中身は様々で、同床異夢が現実だ。少なくとも「首長連合」の言う「地方分権」は、住民自治・住民参加と無縁であるばかりか、大衆動員型の専制政治へと向かおうとしていると危惧する。
地方分権は今後大きな政治的テーマとなるだろうし、なるべきである。だからこそ、「もう一つの世界」を構想するという立場から、地方自治の現実と様々な実験も含めた議論・報告を呼びかけたい。当面、地方自治にかかわる議員・首長の方々から、リレー形式で問題提起をして頂く。第1回目は、豊中市議(大阪府)の木村真さん。新人議員ゆえの、新鮮な目で観た自治体の現実を報告して頂いた。(編集部)
国の法律や政令に縛られた基礎自治体
総選挙の結果、民主党を中心とする連立政権が発足し、地方分権が一気に進むのではとの期待が高まっています。私は基礎自治体の議員の一人として、地方分権(というより「分権論議」)についての率直な印象を書きます。
都道府県はともかく、少なくとも基礎自治体(市町村など)は、地方分権による権限委譲など、本気で考えていません。考えているのはただ財源、つまり「もっとカネをよこせ!」ということだけです。そもそも、権限を引き受ける能力がないのです。
国の機関では、省庁が分かれており、人事異動でも同じ省内が原則です。10年、20年と勤める間に、職員は知識や技術、ノウハウやスキルを身につけていきます。
しかし、基礎自治体の場合は、全く違います。国の省庁に相当するのは、豊中市では「部」。財務省に相当するのが「財務部」、環境省は「環境部」、国土交通省に相当するのが「土木部」と「まちづくり推進部」─という具合です。
人事異動で別の部へ異動することもごく普通にあり、課長以上に限っても、部をまたいだ異動が毎年10人ほどあります。医師や看護師、建築士、保育士などの専門職を除くと、職員は5年程度で異動しますから、専門性など育ちようもありません。
現状では、事細かく国の法律や政令などで縛られており、基礎自治体は言われる通りにやるしかありませんでした。逆に言えば、言われた通りに実務をやっていればよかったのです。権限と責任が与えられれば、一つ一つの問題について全て自治体が自ら考え、判断し、決定することになります。しかし、自治体にはそんな気概も能力もないでしょう。
豊中の人口規模(約39万人)であれば、職員数も数千人規模ですから、何とかできるかもしれませんが、人口が1万人前後、職員百人そこそこという町村にとっては、とてもムリな話です。