[海外] パレスチナ/アッバス、イスラエルのガザ犯罪隠ぺいに協力
──10月2日 「電子インティファーダ」 アリ・アブニーマ
イスラエルとの共謀・財界友人への利益供与…
9月15日、国連人権委員会の依頼を受けて、イスラエルのガザ攻撃「キャスト・レッド」作戦の戦争犯罪を調査したゴールドストン報告が発表された(調査団長は南アフリカのリチャード・ゴールドストン判事)。ハマスのイスラエル領へのロケット砲打ち込みも戦争犯罪としてあげているが、ほとんどがイスラエルの戦争犯罪の記録だ。
3日後、イスラエルは言うまでもないが、米国務省も、同報告はイスラエルに厳しい一方的なものとして、例によってイスラエル・米国ブロックの妨害で、拘束力ある国連機関の裁決にかけられない情勢になっている。それどころか、クリントン長官はパレスチナ自治政府のアッバス議長から同報告書の国連安保理裁決を延期することへの支持を取り付けた。パレスチナ人民はアッバスの裏切りに激怒。ラマラで抗議デモが起き、自治政府がゴールドマン報告不支持に回った経緯を調査する委員会も設立された。10月5日には、パレスチナの民族諸政党、パレスチナ草の根反アパルトヘイト壁運動、パレスチナNGOネットワーク、その他の市民運動団体などが抗議デモを企画した。以下に、パレスチナ知識人のアッバス批判を訳する。(訳者・脇浜義明)
ガザでの戦争犯罪を告発した「ゴールドストン・レポート」
ラマラの自治政府(PA)とその指導者マハムード・アッバスは、「イスラエルと共謀している」との悪評でイメージダウンしている。ところが、アッバスはまたもや新たなショックをパレスチナ人に与えた。
ほぼ死に体になっているPLOを代表して、ジュネーヴの国連へ行ったアッバス代表団が、「イスラエルのガザに対する戦争犯罪を調査したリチャード・ゴールドストン判事のレポートを、具体的制裁を求めて国連人権委員会から国連安保理に送る」という決議を自ら放棄したのである。米国の圧力があったことは確かだが、アッバスと親しい湾岸地域のパレスチナ経済人の利益が絡んでいる証拠も、見え隠れしている。
ゴールドストン・レポートは、575nの大著。そこには、昨冬のガザ攻撃─大多数が非戦闘員の住民や子どもで、1400人が殺害された─で行なわれた戦争犯罪や人道に対する罪が記録されている。また、ハマスのパレスチナ抵抗運動=イスラエル領内へのロケット弾発射─3人の死者を出した─も、戦争犯罪として記録されている。
このレポートは、法による支配を支持するパレスチナ人や世界の人々から、「一つの分水嶺になる」として、大歓迎されている。レポートは、イスラエルが戦争犯罪者や、人道に対する罪を犯した者を調査・告発するよう要求している。さもなければ、国連が犯人を国際司法裁判所に訴えるとしている。しかし、イスラエルは、これまで自国の政治家や軍人をパレスチナ人に対する戦争犯罪で責任を取らせたことは、一度もない。
イスラエルは、あらゆる外交的・政治的資源を動員して、レポートの信憑性を崩そうとした。数日前、ネタニヤフ首相は、もし報告書に書かれてある通りにイスラエルが制裁を受ければ、「わが国の自衛権が否定されることになり、和平へ向かって思い切った一歩を踏み出せなくなる。それは、和平交渉に致命的な打撃となる」と語った。
このイスラエルの「無罪放免キャンペーン」にすぐに賛意を表明したのがオバマ米政権であったのは、別に驚くことではない。米国連大使スーザン・ライスは、ゴールドストン・レポートに対し「大きな憂慮を表明」し、それを「偏った、一方的なもので、基本的に受け容れがたい」と酷評した(ライスは、この4月、オバマ政権が国連人権委員会に入る決心をした理由の一つについて、ライスが「反イスラエルの屑連中」と呼ぶ者と戦うためである、と『ポリティコ』紙に語っている)。