[社会] 京都の地で大好きな「本」と「水俣」にこだわる
──古書店・KARAIMO BOOKS
「石牟礼道子」から水俣へ
西陣の路地をさまよい歩いていくと、「古本」と貝殻で書かれた赤い看板が見えてくる。隣にはサツマイモの蔓の伸びる空き地。
今回お邪魔したのは、KARAIMO BOOKS。京都西陣にあるこじんまりした古書店だ。この場所は30歳の若さである奥田さん夫婦によって、京都の地で水俣についてもっと知ってもらおうという思いを込めて作られた。
からいもの名前の由来
奥田さんご夫婦は、水俣、天草のあたりが好きで、ゆかりのある名前をつけたかったそうだ。《からいも》とは、南九州でサツマイモをさす方言だ。「江戸時代の外来植物なのに、すごく広まっている」と奥田順平さん。その言葉には、「京都の地で、水俣のことを広めていきたい」という気持ちが込められていると感じた。
妻の奥田直美さんが、熊本の郷土菓子「いきなりだんご(サツマイモとあんこの入ったまんじゅう)」をふるまってくれた。おいしい。
店のそこかしこに手作りのからいもグッズ(粘土で作った、からいも型の文鎮、フェルトで作ったからいものぬいぐるみなど)が置かれていて、からいもは、この店のマスコットになっている。「外にも植えているんですよ」と、直美さん。やはり表のサツマイモの蔓には意味があったのか、と納得した。
品揃えは、石牟礼道子・森崎和江・渡辺京二・谷川雁・上野英信・松下竜一の本に力を入れているそうだ。本のみならず、喫茶で出されるお茶、ジュース、店内で販売されている雑貨なども、水俣産のものが多い。なぜ水俣にこだわるのか。
「何かしたい」水俣支援
直美さんが石牟礼道子が好きだったから、というのが出発点。石牟礼道子さんの著作では水俣病のことを扱った「苦海浄土」が有名だけど、他の著作も含めて、その舞台を見てみたいと思ったのが4、5年前。順平さんに薦めたら彼も好きになって、年に1、2回は一緒に水俣や天草に行くようになった。
《水俣》といえば、水俣病は避けて通れないが、逆に「水俣が好きになった」と順平さん。
水俣は、水俣病の公式確認から53年経っていて、今は田舎町だが、支援で入ってきた人たちが居たり、一時期チッソの企業城下町として賑わった都会的な名残もある。そういうミックスされた雰囲気が好きだそうだ。
運動としては関わっていないが、「何かしたい」という気持ちはある。ここの本を読んで関心を持つ人が増えたり、お茶や雑貨を買ったりして支援になればいいな、と思う。「水俣に興味なかった人が来てくれたら嬉しい」と、順平さんは笑う。