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更新日:2009/10/12(月)

[コラム]社会保障・労働問題の不備を見えなくさせてきた「家」
──吉岡多佳子

「出会い、つながったのは、理由があっての必然」

湯浅誠によると、貧困の第一歩は「教育課程からの早期離脱・排除」だという。不登校・ヒキコモリ・高校中退は、80年代から、一方では《更生すべき対象》として見なされ、他方ではリベラルな親の会や教育関係者などから《選択の論理》にすり替えられてもきた。選択の余地なく非正規労働者として生きていく他なかった当人にとっては、まぎれもなく貧困の第一歩なのである。正規雇用が新卒採用に偏り、公共職業安定所の求人票に学歴欄が現存し、最終学歴差別があり、応募資格が「高卒・運転免許」の求人が大半を占める限り、である。

これまで当人たちが内面化しがちであった労働問題に取り組む上で、「平均年齢30歳からの再出発」というシングルマザーたちが明らかにしてきた問題と、それに対する具体的な闘いに出会うことはとても参考になる。

先日、中野冬美さん(しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西)の話を聞いた。まず、2003年の「第11次日本人の国民性調査」によると、「一番大切なものは」との問いに対する答え「家族」がダントツ1位にあがった。50年以降の高度成長期に長時間残業や休日出勤する会社人間が社会で必要とされたので、家事・育児・夫の世話をおこなう妻=専業主婦なる存在が必要となり「標準家族」がつくられた。女性が所得制限内で働くことを当然視し、非正規労働の低賃金化や解雇のしやすさにつながる配偶者控除と第3号被保険者がある。「家族がいなければ生きていけない」という強迫は、これまで介護・育児における社会保障の不備を「妻」が、労働問題の不備を「夫」が、めいめいに補わされてきたことに由来するが、しかしそういった社会保障と労働問題の不備を長い間、私たちは放置してきた。また、母子家庭の貧困の原因は、@賃金の男女差別(女性の賃金は男性の半分)、A正規・非正規(正規の56%)間の賃金差別(非正規女性の賃金は正規男性の44%)である、という。

結婚でいったん無職になり、その後シングルマザーになった人の平均年齢は31・8歳。(無職であった女性が)31・8歳からの再出発をしたときに非正規労働者となる。日本の母子家庭就労率は84・5%と世界的に高く、またダブルワーク、トリプルワークをしているにもかかわらず、就労収入の平均は140万円と低い。「シングルマザーが貧困なのではなく女性が貧困なのだが、しかし、夫や家にいることで見えなくさせられている」と中野さんは言う。

これを身近にひきつけると、Aさんは時給800円で1日7時間の月収約11万円。Bさんは時給850円で1日4時間の月収約7万円。Cさんは派遣労働よりも超不安定労働であるがゆえ廃止すべきだという声も障がい者からあがっている「登録ヘルパー」として、時給1000円で連続12〜15時間労働(休憩無)をしているが、事業所の都合や学生バイトが多い時期などによって予定(勤務予定表も当月頭に届くので、掛け持ちバイトができない)していた仕事にアブれ、月々の収入に波があり、先の見通しが立たない。

これが、選んだわけでもなく非正規労働をせざるを得ない30代女性たちの実情である。「家」では高齢化した年金暮らしの親の介護も目前に控え、ますます「家族」がなければ互いに生きていけなくなり、「家」から出ようにも生涯出られず、これで「自立」などすべくもない。

だが、諦めるにはまだ早い。なぜなら、あえてそのような「家」をいっせいに切断し、「働きのわりには報われることのない若い労働者」(Iさんの獄中からの手紙『長居公園での若い労働者のみなさん』)の、既成事実としての貧困を可視化させ、社会保障を要求していく方法があるからだ。

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