[海外]ヨーロッパに押し寄せる右翼ナショナリズムの波
──塚田紀子
英国の労働党の歴史的敗北と極右政党の台頭
今、津波の様なナショナリズムがヨーロッパ諸国に起きている。特に顕著なのは、英国の労働党の歴史的敗北と、ベルギー・オーストリアにおける極右政党の台頭である。
ベルギーの極右政党「フランドルの利益党」の掲げる政策は、@フランドル地方の独立、A移民の制限、B自由市場経済化の推進で、その他にも、CトルコのEU加入阻止や、D国営企業の民営化、E中絶の廃止、などがあげられている。
オーストリアの極右政党「自由党」は80年代にハイダーという「有能な」ポピュリストを得て、一躍、政権政党にまで躍り出た。その選挙戦略は、一貫している。社会民主党支持者の獲得である。「社民党はもはや労働者の味方ではない。そのリベラルすぎる移民政策で、我々貧しい労働者が不当にも職を失い、ますます貧しくなっている」と攻撃する。05年、自由党は2つに分裂した(ハイダー氏が離党、新党を結成)が、依然として2つ合わせて高い支持率を保持する。
この「自由党現象」の特徴は、若者に話しかけるのが上手だ、という点にもある。煽動し、感動させ、古い政党の退屈な言い分に反発させ、自由党は「革命的」だ、という印象を与える。16才から29才の若者の実に31%が自由党に投票し、社民・保守はそれぞれ18%ずつの得票率を得たに過ぎなかった。ヨーロッパに限らないが、無力化、または保守化した社会民主党(英国労働党のように)への不満と苛立を、うまく吸い上げる事に成功しているのが極右政党だといえる。
ヨーロッパ文化の優越性を心地よい言葉でささやきかけ、「人種差別的な、民主的小市民」というジャンルを確立しつつある。例えば、「女性の人権を阻害するモスレムの風習、スカーフをやめさせろ」などと。反モスレム意識の煽動はこのところ顕著で、モスクの建設に反対するデモなどが、自由党の主導で何度も組織されている。