[コラム]吉田信吾/スタッフと利用者の負担もアップ?
介護報酬があがった!?
3月。通常の企業ならば、新年度の事業計画なんてとうに出来ていてスタッフにも周知、全社一丸になって頑張ろう!なんてところなのでしょうが…。我々の福祉業界はちと違うのです。
昨秋からマスコミが垂れ流してきた『介護報酬アップ』の情報。結局全貌が明らかにならないままに年が開けました。厚生労働省での最終決定、都道府県の担当会議、市町村の担当会議…、我々事業者の所に膨大な書類と共に正式な情報が伝わってくるのが3月中旬、事業者向けの説明会を受けて、要求される書類作成に入ります。
4月からの制度変更なのに、申請期日が4月10日。申請が受理されるかは不明なので、4月からいくらもらえるかも正確にはわかりません。しかも、国・行政から降りてくる通知って大概あいまいで、色々な解釈ができるものですから、現場からの様々な質疑に合わせて『Q&A』なんていう名の解釈通知がやってきます。『軍隊は持たない!』旨を記してある憲法があるのに解釈で軍隊を持っちゃってる国ですから、この解釈が厚労省はじめ役人たちの恣意的なもんだということが想像できるでしょう。解釈がいつ変わるかわからない中で、現場は振り回され続けるのです。
でも、我々事業所は、新年度の方針を語り雇用契約の更新をしなければいけないので、スタッフ向けの説明会をギリギリ(3月29日!)になって開催。今回は、多少なりとも賃金アップができそうだから気楽でしたが、大改悪がなされた2006年度改定の時は緊張しました。
で、「介護報酬アップ」のしわ寄せは? ほんまに報酬単価はあがるのか? 一時間単価2000円が2500円にとか、4000円が5000円にとかすっきり上がるならわかりやすいのです。けれども、官僚がやることはセコイ。「職員の何割以上が介護福祉だったら」とか「研修計画を作ったら」とか…、で、条件をクリアした事業所だけが10%アップだとか20%アップだとかいう話になります。
つまり、ヘルパーさんを集めるだけでもヒイヒイで日々の援助を回すので必死、職員研修したくてもやっている余裕がないなんていう零細事業所には縁のない話。
一方、なんとか加算がとれそうな事業所にとっても、諸々の書類作成や体制作り、利用者さんから来るであろうクレーム対応等などに振り回される日々が続くのです(報酬単価が上がるということは、利用者さんの負担額(1割です)も上がるということです。また、介護保険制度では使えるサービスの上限が決まっています。今まで使えていたサービスが使えなくなるなんてこともありますから、クレームが出て当然です)。
「介護報酬のアップ」の正体は、結局利用者さんと現場スタッフへの負担となるのですよね。あーあ。