更新日:2009/07/23(木)
[社会] 被介護者のヒゲが剃れない…?!
当事者不在の制度に怒り
「ヒゲって私たちじゃ剃れないんですよね…」看護師は呟いた。―先日入居した男性が、今もヒゲが剃られないことが話題になったときのことだ。男性はT字型のカミソリを持参していた。そこで私は、そのカミソリで男性のヒゲを介護スタッフに剃るよう頼もうとしていた。「何で?」と聞くと、「剃る資格が無いんです」。愕然とした。かつて私自身も入浴介助の際に、男性利用者のヒゲをカミソリで剃っていたからだ。
ヒゲは第三者が本人の同意なく剃ると、暴行罪が成立してしまう。その男性は認知症だったから、本人からヒゲを剃る同意が得にくいからなのか?と思ったが、少し事情が違った。
介護施設であっても、ヒゲを剃るのはあくまで男性入居者自身で、第三者が剃るのは理容師に限られる=ヒゲ剃りは理容行為(注1)、というのが厚生労働省の長年の見解なのだ。もし介護施設職員が男性のヒゲを剃るなら、「その男性の自立支援の為の介助でのみ許される」のだという。調べれば調べるほど、私も腹立たしくなった。
全くおかしな話だ。介護職員はヒゲ剃りよりも身体への密着度が高く、危険な状況が生じる入浴介助も行う。高齢者の身体衛生管理は、介護職員の義務だ。また、整容=身体をきれいに見せる介助も介護職員には求められる。ヒゲを伸ばすにしても剃るにしても、ここは介護職員の出番だろうし、高齢者は介護職員に求めるのが筋だろう。
ところが現行法だと、自宅で暮らし身寄りのない男性が、第三者にヒゲそりを頼むとなると、自宅への「訪問理容師」を呼ぶことになる。法律も問題だが、こんな法律について介護職員の中でどれだけ認識があるか疑問だし、『違法行為』を日常的に犯す恐れがある。
続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。