[海外] キューバ/スローでエコ 社会的連帯で支え合い
地方自治と住民参加
「アメリカは、キューバに『自由選挙』を要求するが、実態を知ってから判断すべきだ」―元外交官のミゲル・バヨナさんは、キューバの選挙制度についても自由で公正だと胸を張る。
キューバを「独裁国家」と呼ぶ米国は、民主主義のモデルと自認し、他国への暴力的輸出も辞さない。しかし、「アメリカには、基本的に1つの政党、2つの派閥に分かれたビジネス政党しか存在しない」と指摘するのは、ノーム・チョムスキー氏だ。米国こそビジネス政党による独裁国家で、民主化が必要だという。
2004年大統領選挙がわかりやすい。同大統領選挙候補者=ブッシュとケリーは、財力・政治力のある名家の出身で(遠い親戚でもある)、同じ名門大学=イェール大で教育を受け、同じ秘密結社=スカル・アンド・ボーンズの会員となって帝王学を修得し、ほぼ同じ大企業から資金を得て出馬した。
最終回は、彼らが、「独裁国家」と呼ぶキューバの選挙制度と住民参加のシステムについて報告したい。
選挙は、まず、約百人単位の地区毎に集会が行われ(主催は革命防衛委員会)、自薦・他薦で2〜3人の候補者が推薦される。推薦基準は、地域社会への貢献や人柄・職業実績などだという。挙手による投票で、半数以上の賛成で候補者となる資格を得る。
地区議会は、こうして推薦された候補者からさらに数人が秘密投票で選挙される。国会議員選挙も候補者リストに○をつける秘密投票だ。
開票・集計は衆人監視の元に行われるため、「世界でこれほど公正な選挙はない」とバヨナさんは胸をはる。
キューバ選挙の特徴は、地区集会での候補者推薦という仕組みだろう。普段の生活態度や行動を知る近隣の人々による評価・推薦なので、美辞麗句による誤魔化しは効かない。いくら耳障りの良い公約を示しても、行動・生活態度と一致していなければ、推薦は得られないからだ。
ただし、投票率98%という数字をどうみるべきなのだろうか?バヨナさんは、この数字を現政権への圧倒的な支持を示すものだと主張する。しかし対抗政党がなく、選挙そのものが革命防衛委員会の手で準備され、第1段階で地域住民の半数の支持を得た候補者の中から選出されるのだから、事実上、信任投票になる。政策を争う選挙ではなく、人物を選ぶ信任選挙だ。