[コラム] ネット世論からも見放された在特会、維新政党・新風
──東京・野間尽
「2ちゃんねる」すらそっぽ
在日特権を許さない市民の会(在特会)や維新政党・新風(新風)などといった極右を自認する新しい保守勢力に共通する戦略は、インターネット上の匿名世論を支持基盤とし、組織の拡大を図ろうとしている点だ。
そもそも彼らが、自分たちの街頭活動を写した画像や動画を配信し始めたのは、「新風」を熱心に支持するブロガー(ブログを活用する人)であった瀬戸弘幸氏が、2007年に同党の副代表に就任した前後にさかのぼる。
かねてから2ちゃんねるを中心としたネット上の匿名世論のなかでは、中国人や朝鮮人、さらには「反日」と目される朝日新聞や左翼勢力に対するバッシングが吹き荒れていたが、いわばネット世論に呼応するかたちでの政治的パフォーマンスとして、彼らの活動は注目を浴びていった。
しかし最近は、支持基盤であったはずの2ちゃんねるでも「新風」を批判する論調が数多く見られるようになってきている。
その理由は決して一つではない。活動資金を集めるためと称していかがわしい健康食品を売ることを計画したり、昨年のチベット支援デモの際には他団体の主催するデモを偽善だと批判したり……といった具合に、ここ1年間は批判のネタに尽きない。
要するに、「新風」という政治団体へのネット上の関心が高まるにつれて、逆に彼らの期待する、志の高い清廉潔白な政治団体のイメージにそぐわない多くの醜態をさらけ出しはじめたというのが実情だろう。今では一部ブロガーを除いて、「新風」その他の極右団体を支持するネットユーザーは少ないので、いわば自滅とも捉えられる。
ただその一方で、日本社会のありとあらゆる不正や矛盾を、中国・朝鮮人や創価学会、マスコミの陰謀として糾弾する極右勢力の妄想的言動に対して、資料やデータを挙げて反証を行っていたブロガーたちの存在も忘れてはならない。これらの作業に中心的に関わっているのが左翼活動家ではなく、運動嫌いの保守的なリベラリストたちであることも興味深いことだ。
いずれにしろ、彼らの熱心な検証作業や追跡調査によって、最近では「新風」の背後関係や活動資金の流れなども解明されつつある。すでにネット上で孤立化を深めている「新風」その他の極右団体ではあるが、ついにその根本からして胡散臭いものであったことが暴露される日もそう遠くはないのではないだろうか。