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更新日:2009/06/24(水)

[海外] キューバ/貧乏人にやさしい高福祉社会

【現地ルポ】「もう一つの世界」としてのキューバ

4月24日から約2週間、キューバを訪問した。「完璧な政治・社会制度など、あるわけがない」こうした確信は私の中で今も揺るがない。社会は常に変化し、進化すべきものだからだ。しかし、「福祉国家」としての、あるいは「貧乏人にとって」のキューバの社会制度は、わずか2週間でその欠点を見つけるのが難しいほど貧乏人にやさしい社会だった。(編集部・山田)

短時間労働で仕事を分け合い、賃金格差も極小

キューバは、別な言い方をすると「金持ちに厳しい国家」である。そもそも金持ち=格差が生まれることを常に警戒している。経済の自由化で恩恵を受ける観光関連の営業には、登録を義務づけ、会計帳簿を提出させてきっちり税金をとる。税金を払う人が少ないこともあって、常に国家財政は赤字なので、とれる所からとるというのが、実状かもしれない。それでも不満が生まれにくいのは、そうした税金が何に使われ、どういう恩恵(無料の医療・教育・福祉)を受けているかがはっきりしているからだろう。

全ての人への無差別・無条件の食・住・職の保障。これを維持するために、金を稼いでいるところからしっかり税金をとる。教育費が大学まで無料の代わりに、2年間の「社会サービス(有給だが低額)」を学生に課す。特に教育費がかさむ医学部卒業者=医師には、一般労働者並みの賃金での労働を求め、報酬の代わりに、高い社会的賞賛や海外派遣という「特典」がある。このため比較的低賃金にもかかわらず医学部は高い人気を誇り、農山村地域でも日本のような「医師不足」に悩むことはないのである。

ハバナ大学キャンパスで学生3人に「最も高い給料の職業は何か?」と聞いた。少し考えて返ってきた答えが、「大学教授か掃除のおじさんだろう」という。金融ディーラーや大企業経営者が、数億円という途方もない所得を得ているセイヨウ的常識からは、信じがたい答えだ。

こうした証言は、街角で聞いた全ての人の一致する意見だ。キューバで証券トレーダー・大企業経営者はあり得ないにしても、キューバの高額所得者は医者でもIT技術者でもなく、政治家や官僚でもなく、地味な大学教授か掃除のおじさん・おばさんなのだ。その金額も平均賃金の3倍に満たない。

こうした賃金の設定は、「国家」がすべてを決めている。なにせ労働者はすべて公務員なのだから。この賃金政策の基礎となっている「価値観」こそが、資本主義とは根本的に違うものだ。

街角インタビューを試みたのは、せいぜい20人くらい。半分位の人には断られた。たかだか10人程度に話を聞いただけなので、極めて部分的な見聞に過ぎないことは、言うまでもない。しかし、キューバが、世界から注目を集め、「もう一つの世界」を構想する上で、選択肢のひとつに成りうる社会であるとの確信は得た。物質的には決して「豊か」とは言えないキューバだが、ゆったりとした時間の流れの中で、様々な工夫を凝らしながら、持続可能な経済・社会を創りあげつつある。

「豊か」と言われる米国や日本で失業者やワーキングプアが溢れ、一方、「貧困」といわれるキューバでは、求めさえすれば仕事と教育は用意されており、病気・高齢そして失業の恐怖もない。

人が幸せに暮らすために必要な「経済成長」は、思ったより低くて大丈夫。むしろ、限られたエネルギーや資源をいかに効率よく使い、広く分配するかにさえ気を配り、工夫を怠らなければ、持続可能でゆったりとした生活は十分可能。要するに、我々の選択次第なのである。

貧しいけれど豊かな社会

労働者の生活はどうなっているのだろうか?WEBデザイナーのミゲルさん(33才)は、美術系大学卒業後、UCI(情報科学大学)で専門教育を受け、現在の職場に就職した。キューバで今、IT関連の仕事は、憧れの職種だ。

現在、@子どもたちの環境教育に用いるWEBページ制作とAチェ・ゲバラの歴史に関するWEBページを並行して進めている。いずれも政府が発注者で、環境教育HPは、地域のリサイクル活動などにも活用される予定だという。

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