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更新日:2009/06/09(火)

[海外] パレスチナ/カフカの「変身」上映

3月13日 『PNN』より

ベツレヘムでアル・ハラハ劇団がカフカの『変身』を劇化し、パレスチナという状況の中で激しい共感と悪夢を再現した。主人公グレゴール・サムサはある朝目覚めると巨大な虫になっていた。彼の仕事は行商で、こんな姿になって、「どうやって仕事に行けるのか」と自問した。これは、パレスチナを切断するチェックポイントで足止めされるパレスチナ人が毎日最初に感じる疑問である。

グレゴールは自分が変身したという意識、いや自分の身に変化が起きた事実を認めることに抵抗した。自分は昨日までと同じ自分である。変化したのは自分の周囲の人々の反応である。彼は外の天気が悪いと、まるで普段と同じように愚痴を言ったりした。

観客は薄暗い劇場の中でグレゴールに集中していた。グレゴールを演じるのはベツレヘムの住人ニコラ・ズリーネ。肉体の驚くべき変身に抗して、なおも人間であることを維持しようとする迫真の演技であった。

グレゴールは変身が何故・どのように生じたかは問わなかった。彼はひたすら変身前の生活を形成していた細々したものにしがみついた。しかし、動こうとしても不器用に這うしかできず、話そうとすれば喉からシューシューという音が出るだけであった。部屋(檻)に入ってきた妹グレーテは悲鳴をあげ、「おだまり!おだまり!」と叫んでフライパンを振り回す。彼は彼女を愛し、彼女も彼を愛していた。しかし彼女の兄への愛は消えてしまった。今や兄は一家の重荷にすぎなかった。しかし、グレゴールは以前と同じように家族を愛していた。その愛から、自分が愛する家族にとって重荷になったという耐え難い事実を認め、彼は餓死による自殺を選ぶのであった。

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