[反貧困] 「メーデーどころじゃないのよ。ところが…」
──生活ヤバい人々 八木航
メーデー09 〜生活ヤバイ!〜
「失業者に仕事を=労働者に休息を」―。
信州松本で、8時間労働と8時間の自由を求める失業者と労働者の合同デモを行った。「8時間労働」という120年前のメーデー起源の獲得目標は長時間労働強制への反対に他ならないが、職を求める失業者にとっても「8時間の仕事よこせ」と読むことができる。参加者は元派遣・生活保護受給者・野宿者・メンヘラー・バイト・ニート・パンク・牧師・その他よく分からない感じの人々合計20名超と、参加者なのか野次馬なのか識別不能の人々。小規模ながら、地方のド田舎メーデーとしては「成功」と言い張りたい。
「ダメーデー」や「立ち上がれない者たちのメーデー」など、従来の出オチっぽいタイトルを期待していた皆様には申し訳ないが、今回のデモを我々はシンプルに「メーデー09」と名付けてみた。この冬、「派遣村」「派遣切り」等の言葉で知られた状況も、結局、120年前の目標が今なお獲得されていないというシンプルな問題でもある。だからこの根本的なところで闘うために、今年のメーデーは、シンプルに、原始的に、「メーデー」。
疲労感とともに
…という理屈は、かなり後付けのコジツケであって、実は単に、凝ったタイトルを決める議論の元気がなかったというのが真相である。というより正直なところ、私たちは、今年のメーデー実施に乗り気でなかった。なぜなら忙しかったから。この冬、私の参加する小さな困窮者支援グループにも多くの相談があった。多聞に漏れず、酷い状態からの相談。所持金30円でマイナス12℃の駅前を彷徨っていたり、電気が止められてローソクの灯りで暮らしていたり……。
私たちは連日、職安や福祉事務所を走りまわり、時には労組の真似事をして雇用主との団体交渉を行ったりしていた。多忙なだけではなく、行政や解雇企業への憤りも、その日の飯と屋根の心配が先行することで切羽詰まった疲労感とともに暗く沈澱してゆく感じだ。それは路上でガツーンと放出したい質のものではなく、つまるところ、心身ともに「サウンドデモどころじゃないのよ」モードに入っていたと言える。昨年は「弱い者故の立ち上がり難さ」をテーマに実施したが、今年は本当にさっぱり「立ち上がれない」気配が濃厚だった。