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▲昨年イスラエルを訪問したオバマ氏は、自治政府のアッバス議長とも会談した(7月)
更新日:2009/06/07(日)

[海外] パレスチナ/イスラエル・パレスチナ問題とオバマ

1月26日 『Znet』 ノーム・チョムスキー

バラク・オバマは頭が切れる法律専門家で、言葉遣いが慎重な人物として知られている。だから、彼が何を言い、何を言わないかは非常に重要である。

1月22日、ジョージ・ミッチェルを中東特使に任命した時、オバマは国務省で対外政策について初めて発言した。ミッチェルは、あの米国・イスラエルのガザ攻撃の後を受け、イスラエル─パレスチナ問題に集中することになる。

あのガザ殺戮の間、オバマは2、3の平凡な決まり文句以外は、何も言わなかった。当時はまだ大統領に就任していなかったので、「米国の大統領は1人だ」と言い訳した。しかし、他のことは随分喋っているのである。

例えば選挙運動中、彼は「もし私の2人の娘が眠っている家へ大砲の弾が落ちてきたら、私はそれを止めるために何でもするだろう」と繰り返した。彼が言及しているのはイスラエルの子どもたちのことで、米国製武器で殺されているパレスチナの子どもたちのことではない。

1月22日、オバマは大統領に就任し、ガザ攻撃について自由に論評できるはずであったが、何も言わなかった。うまい具合に、就任前に攻撃が終了したのである。しかし、彼は平和的解決を目指すことを強調した。その方策や内容は明らかにしなかったが。

ただ、一つだけ具体的に、「アラブ和平案は、平和的解決を目指す上で有益な建設的要素を含んでいる。今こそアラブ諸国が、自ら提案している和平案に立脚して行動し、アッバス議長とファヤッド首相のパレスチナ自治政府を支持し、イスラエルとの関係正常化を進め、我々を脅かす過激集団に立ち向かう時である」と語った。

オバマはアラブ連盟の提案を入念な言葉遣いで歪曲している。確かにアラブ連盟和平案はイスラエルとの関係正常化を呼びかけているが、それは、ずっと昔から国際社会のコンセンサスであり、過去30年間米国とイスラエルが実現を阻止してきた2国家解決を実現させる脈絡の中で提案されているのである。

その重要な条件や脈絡を省いたのは決して偶然の過失ではなく、オバマの考えが従来の米国の拒否路線と変わるものではないことを示すものに他ならない。アラブ連盟案の一番重要な中身を無視し、その中身が満たされて初めて出現する結果だけを取り上げて、アラブ諸国にその結果に従って行動せよと呼びかけるのは、シニシズム(冷笑主義)以上のものである。

平和的解決を妨害しているのは、占領地で米国支持のもとで日々行なわれている犯罪行為である。貴重な土地や資源を奪い、かつてシャロンが「バンツースタン」と呼んだものをパレスチナ人用に作っている。しかし、パレスチナ人用の断片的飛び地をバンツースタンに喩えるのは不当である。バンツースタンの方がはるかに存続・生存可能であったからである。

西岸地区での入植地やインフラ建設と占領が平和的2国並存解決の展望を破壊しているのだが、オバマはそれに関しては一言も言わない。

また国際法違反のイスラエルの米国製武器弾薬をガザでの使用にも、ガザ攻撃の真っ最中に米国がイスラエルに新武器弾薬を送ったことにも、一言も触れない。ところが、ガザへの武器密輸については、「それを止めるべきだ」と口喧しく演説する。オバマは、前政権の国務長官ライスがイスラエル外相リヴニとの間で同意したエジプト─ガザ国境閉鎖の継続を認めた。

オバマのアラブ連盟案「建設的要素」発言に話を戻すと、その発言から明らかなように、彼は、前ブッシュ政権と同じように、アラブ世界で唯一の自由選挙であった06年1月選挙で敗北したアッバス支持の姿勢である。

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