[情報] 各地のフリーターメーデー
自由と生存の家設立記念シンポジウム
自治的空間と地域とのつながりを求めて
今年もメーデーの季節がやってきた。一昨年の東京・大阪でのフリーターメーデーの取り組みは、昨年全国14ヵ所に広がった。今年は、さらに新たな地域での取り組みが広がっている。
今年のフリーターメーデーの特色は、こうした「点」の拡大だけではない。「居住の貧困」(ハウジング・プア)に焦点を当てたことだ。4月4日に東京・神宮前隠田区民会館でおこなわれた「自由と生存の家設立記念シンポジウム」の様子を、また先月29日の熊本・京都でのフリーターメーデーを紹介する。
昨年以降、東京・日比谷公園での「派遣村」の取り組みが大きくクローズアップされ、非正規雇用の問題は社会的に広く認識された。当事者の取り組みは、これからもますます広がっていくことだろう。人民新聞ではそうした運動の経過を追っていきたい。(編集部)
自分たちの手で安定した居住を
今年も各地でフリーターたちが独自のメーデーに取り組んでいる。それぞれの地域での特色を反映した、思い思いのスタイルで自律的に取り組むこうしたメーデーは、一昨年ごろから広がりをみせ、主催者は「今年は全国100ヵ所での開催を目指し、たくさんの仲間と出会いたい」と意気込みを語っていた。
今年の特色あるテーマとなったのは、「居住の貧困」(ハウジング・プア)をめぐる問題だ。年末以来の「派遣切り」では、失業即ホームレス状態となる不安定な居住環境の問題が明らかとなった。また、家賃滞納を理由に保障会社が居住者に立ち退きを強制する「追い出し屋」や、インターネットカフェでの宿泊が常態化する「ネットカフェ居住」などが大きな問題として取り上げられるようになった。
フリーター全般労組(東京)は、「自由と生存の家」を立ち上げ、「自治的空間の創造」へ踏み込もうとしている。
フリーター全般労組が組合員に実施したアンケート調査によると、住居・水光熱費の収入に占める割合が3〜4割の人が56%を占め、5割を超える人も6.7%いたという。一般的な貧困基準としては、「住居費は収入の3分の1」となることが限度とされており、住居費が生活を大きく圧迫している現実が見えてきたという。
このため同労組は、08年の大会で「住宅部会」を発足させ、生活の土台である住宅を自分たちで建て、運営するという「自由と生存の家」プロジェクトを発足させた。安定した住居がないなら自分たちで作り上げる。それだけでなく、そこを「自治的空間」として運営することで、居住環境の決定権を自分たちの手に取り戻そうというものだ。
賛助会員の知り合いである不動産屋さんの協力を得て、新宿区四ッ谷にある木造2階建てアパート2棟を借り上げ、組合員の手で改修工事を行い、できるだけ安い住宅を提供するモデル事業にしたいという。
4月4日には「自由と生存の家設立記念シンポジウム」が行われ、自由と生存の家の概要が語られた後に、雨宮処凛さん(作家、反貧困ネットワーク)、湯浅誠さん(NPOもやい、反貧困ネットワーク)らから同プロジェクトへの質問や期待が語られた。
湯浅誠さんは、「自由であればあるほど規則が積み上がっていくという矛盾をどう解決するのか?興味深く見守りたい」と語る。湯浅さんらもグループホームの運営を考えているそうだが、上意下達式の管理にならず、また規則で自縄自縛することなく運営する方法を見つけ出したいという。
これは、運営側と入居者の間に「支援する」「される」という分離を生み出さないためにも重要な視点だ。自由と生存の家では、入居者が自治会を組織して、自主運営をめざしている。
また、地域との繋がりも重視する。高円寺でフリーターが自らリサイクルショップや飲食店を運営する「素人の乱」は、地域の商店街組合の運営に積極的に関わり、地域全体への働きかけを志している。自由と生存の家も、地域に開かれた新しい住民組織として存在感をつくり出したいという。
「家」には、フリースペースも設けられ、各種イベントや会議に使えるようになっている。また、労組の事務所も入居予定で、労働者の相談を受ける機能も持たせたいと考えている。