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筆者:小淵麻菜
福岡女学院短期大学卒。東京でOL経験後、日本語教師に。渡米後、理論言語学で博士号取得。現在、オランダのユトレヒト大学言語学研究所研究員。その傍ら、市民大学で日本語教育に従事している。
更新日:2009/06/07(日)

[海外] オランダ/オランダ非欝の構図

心の問題を抱える友人達

この冬、ここオランダで私のある日本人友人が鬱と思える状態になり、自殺を口走って丸1日行方不明になるという事件が起きた。それだけではない。昨年は中国人の友人2人も鬱状態になった。

その中の1人は日本で300万人いると言われる引きこもりの人たちのように、自分の部屋に閉じこもったまま昼と夜が逆転した生活を送り最低限の外出しかできないようになってしまった。無論、私のメールには返信が全く来なくなった。

なぜか心の問題や病を抱える人が私の知人・友人の中に現れ、日本の引きこもり、鬱、自殺の問題を鑑みて、改めて考えさせられる。元気な心を持っていた人が、いつどのようにして大きな心の病を抱えてしまうのか。心の問題に自分はどのように対処するべきなのか。周りの人間は何ができるのか。そして心の問題を防ぐ為に社会はどうあるべきなのか。

オランダにも鬱の人たちはいるし、もっと深刻な精神的な病を煩う人はいる。しかし日本のような「引きこもり」はない。どんな違いがあるのか?

責任あるサポートシステム

両国の大きな違いは、オランダでは、サポートの基盤がしっかりできていることだ。オランダ人の友人が勤める某銀行には、カウンセリングオフィスがある。彼女が言うには、会社内の人間関係などに関わる問題の他にも、仕事の条件や自分の希望等についての悩み、体調に関する問題なども秘密厳守で相談できる。

しかし私が感心したのは、これが会社の内部に存在し、会社が責任を持っている事である。企業にとって「社員は全て」と言って良い。その企業の円滑な営業を行う為に雇い、会社の為に働いてもらう代わりに報酬を支給する。体だけでなく、心も健康に働いてもらわねば本望ではない。企業が社員を大切にするのは当たり前の事であり、会社にとっても個人にとっても、これは非常に建設的である。

私の関係する大学にもそうした支援システムがある。知人の大学教員は、忙殺的な仕事とそれに関係する人間関係の悪化による長期のストレスの挙げ句、とうとう上司との無信頼な状況に追い込まれ、「学部が自分を解雇する為に動き出している」と疑うまでになった。

そこで、意を決して大学の組織内にある相談室を訪ねた。ここでは大学が職員に対して不当な扱いをしているかどうか独立的に調べる事ができ、かつ大学が普段公にしない内側も了解している。彼はここでいろいろな権利について情報を得た他、何よりも心の安定を取り戻す事ができた。上司、同僚との意思疎通は少しずつ改善に向かっている。

日本の大企業では専属の医師がいるところもあるだろうが、会社専属のカウンセラーはどうであろうか。また、そのようなカウンセリングがあったとしても、果たしてどれほど活用されているだろうか。ここでまた気づかされる事がある。

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