[社会] 派遣村と同じことがなぜ釜ヶ崎でできないのか?
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不況の影響は釜ヶ崎にも及んでいる。釜ヶ崎炊き出しの会によれば、炊き出しの数は昨年の5割増。このままのペースだと、炊き出しの米が不足してくるという。
釜ヶ崎炊き出しの会代表の稲垣浩さんから、釜ヶ崎の近況を寄せてもらった。(編集部)
「これが差別行政なんです」
年が明けると、いつもなら炊き出しに並ぶ人が年末に並んでいた人(約200人)と同数程度になるのですが、今年は並ぶ人の数が徐々に増えています。朝11時の炊き出しにいまは400人以上の人が並んでいるのです。
派遣切りにあったと思われる若い人の顔もちらほら。初めて来たのでしょう。「お金はいらないんですか」と若い人。「無料ですよ」と返事したら遠慮がちにお椀に入った「おかゆ」と箸を持って公園の片隅へと立ち去りました。
東京の日比谷公園で年末年始、年を越した派遣労働者のもとへ厚生労働省の職員がわざわざ公園にまで出向いて仕事の紹介をしていましたね。
私は釜ヶ崎に来て38年経ちますが、釜ヶ崎では日比谷公園の出来事と同じことが繰り返されています。釜ヶ崎の中にはあいりん職安があります。仕事もなく仕方なくテント生活をせざるを得ない人達のところへ「仕事の紹介をしましょうか」と言って回ったあいりん職安の職員はいるでしょうか。そんな話は聞いたこともないし、見たこともありません。そもそもあいりん職安は仕事の紹介業務をしていないのですから。
日比谷公園でできたことが釜ヶ崎ではできていません。どうしてですか。これが差別行政なんです。釜ヶ崎の労働者に対して予断と偏見をあおり(これは権力の常套手段ですね)、差別行政を行う。
釜ヶ崎の日雇労働者の求人は中間搾取をする違法な手配師、人夫出しの人達にまかせています。そのしわ寄せがすべて労働者にくるのです。ピンハネ、労働条件違反、賃金不払い、労災もみ消し、暴力事件、働いた現場で日雇労働被保険者手帳を出しても印紙を貼ってくれない等。被害者はいつも労働者です。この責任はすべて国の労働行政にあります。(釜ヶ崎炊き出しの会代表 釜ヶ崎地域合同労働組合執行委員長 稲垣浩)