[社会] イスラエル経済に影響を与え始めているボイコット運動
──脇浜義明
大きな効果
『イノヴェイティヴ・マインズ』は、ITを使ってイスラム理解を西洋社会に広めようとしているソフトウエア会社だが、イスラエルの占領政策に協力する企業の製品の不買運動を呼びかけ、そうした企業の情報をITで流している。
これは、世界の普通の人々が購買選択の自由権を行使して、不買を通じてパレスチナ占領を終わらせる運動で、かつて南アフリカアパルトヘイト政権に対する闘いで効果を発揮した。
しかし、決してユダヤ民族やユダヤ教徒に対するボイコット運動ではなく、パレスチナへの人種差別的占領を支持する企業の産品だけが対象である。対象企業やそのトレードマークのリストを見れば、そのことは一目瞭然に分かる。イスラエルに協力するムスリム経営の会社も対象となる。(http://www.inminds.co.uk/boycott-israel.php#com-panies. また、http://www.inminds.com/boyco-tt.brands.html)
この運動の支持者は世界中にいて、労働組合、例えば英国最大の労組UNISONなども、イスラエル全産品ボイコットを呼びかけている。クリスチャン・エイズなどのキリスト教団体もボイコットに加わり、EU―イスラエル貿易協定に反対している(EUは占領地の入植地産品を輸入禁止にしている)。
イスラエル内のユダヤ人平和団体、ブツェレムやグッシュ・シャロームも独自のイスラエル商品ボイコット運動を展開している。ムスリム社会では、各派のウンマ(共同体)がこの運動を支持する決定をしている。
ボイコットは失業を生む?
「シオニストは世界中の市場や経済に蛸の足のように関わっているから、何を買っても間接的に彼らの利益になる」という議論があるが、リスト化された企業は明白なイスラエル支持企業だ。その企業をボイコットすることで、他にも影響を期待できる。
リスト企業はムスリム社会でも営業しているので、ボイコットはムスリムの失業に繋がらないかという議論もある。確かに企業が潰れたり逃げ出したりすると、従業員ムスリムは失業するが、これは損失というよりチャンスと見るべきである。
例えばコカコーラであるが、ボイコット運動のため中東のコカコーラは60%の販売減となったため、イスラム慈善団体が所有するイランのザムザム・コーラのチャンスとなった。今や湾岸諸国にも工場を建設し、地元の雇用促進に貢献するようになった。デンマークなどヨーロッパの国もザムザム・コーラを輸入している。そもそも多国籍企業は博愛の精神でムスリム社会に進出しているのでなく、搾取するためであることを忘れてはならない。
イスラエルの巨大衣料企業デルタ・ガリルは、GAP、バナナ共和国、カルヴァン・クライン、BOSS等々のラベルで衣服を売っているが、エジプト、ヨルダン、パレスチナにある同社の工場は奴隷工場として有名で、「搾取工場の帝王」という異名をもつほどだ。そんな企業がなくなることは損失ではない。