[コラム] 経済至上主義の転換めざし新団体「みどりの未来」始動
兵庫県議会議員・「みどりの未来」共同代表 稲村和美
未曾有の金融危機が世界を直撃したさなかの11月22日。「虹と緑の500人リスト運動」および「みどりのテーブル」、二つの団体の解散総会と同時に、両団体の組織合流によって発足する新たな政治団体の設立総会が行われました。新団体の名称は「みどりの未来」に決定。経済成長至上主義にもとづく社会経済システムからの転換を目指し、脱石油・脱原発を基本とするエネルギー政策、国内外の格差を是正し、戦争による利権の争奪戦に関与しないですむ産業構造と労働のあり方、時代の変化に的確に対応した医療・社会保障制度、税制の構築などについて積極的な政策提言を行い、それらを実現するためのキャンペーンや政治活動に取り組んでいく予定です。
「虹と緑」は、1998年に、無所属・市民派議員と市民のネットワークとして発足。「地方から政治を変える」をスローガンに自治体議員の政策力向上を図るとともに、緑の党の国際ネットワークであるグローバルグリーンズにも参画。首長選挙への積極的な挑戦や、2004年には中村敦夫氏を中心とする「みどりの会議」の呼びかけに応えて参院選にも参画するなど、幅広い活動を展開してきました。しかし、会員構成や活動が自治体議員中心となり、「市民派議員」のあり方も多様化する中で、新しい政治勢力としての可視化を目指した取り組みや事務局体制の維持に課題が生じていました。
一方、「みどりのテーブル」は、参院選で議席を失ったものの、全国比例で約90万票を獲得した「みどりの会議」を引き継ぐ形で2004年に発足。日本におけるみどりの政党設立と国政選挙への挑戦を志向し、2007年の参院選東京選挙区では川田龍平氏を擁立。「虹と緑」や幅広い人々の協力と実力以上の奮闘で当選を勝ち取り、国会での議席をテコに飛躍を図ったものの、結果的に川田議員はみどりの政治運動からの離脱と無所属議員としての活動を表明。知名度の高い候補者に依存する選挙の限界を痛感することになりました。また、会員には環境・人権・平和問題など各分野で活躍する市民活動家が多いのが魅力である一方、財政基盤と組織体制の脆弱さが大きな課題でした。
川田議員の選択は私たちにとって残念な結果ではありましたが、一方で、みどりの政治勢力に新たな展開をもたらしました。「みどりのテーブル」と「虹と緑」が、中心メンバーの重なりや、サンパウロで今年行われた第2回グローバルグリーンズ大会への合同派遣団による参加などを背景に、改めてみどりの政治を志向する人々の総結集を図り、両団体の強みを持ち寄ることによる組織体制の充実と、政策力の向上を目指すことになったのです。
新団体「みどりの未来」は、将来的なみどりの政党設立と国政選挙への関与を目標に内包しつつも、現状ではあえて政党を名乗らず、超党派性を特徴とするNGOや市民運動との連携によるシンクタンク機能の強化を図るとともに、無所属の立場を尊重し、党籍も問わない「地方自治体議員政策情報センター」を独立機関として併設し、まずは論説活動の充実と質の高いニュースレター発行による組織基盤の拡大に取り組みます。
多様な人々との開かれた連携を前提に、既存政党とは一線を画した政治のあり方を模索する大きなチャレンジの再出発に、ぜひご注目下さい。