[反貧困] トータルな社会像を提起する変革の視点を
インタビュー 田畑稔さん:大阪経済大学 (下)
はじめに
田畑稔さんは、ワークシェアリングなどの社会実践が反貧困運動の中で注目される「オランダモデル」について、濫費型社会を克服するひとつのモデルとして、そこに人類史的な展望を見いそうとする。前号に引き続き、日本の反貧困運動への提言として、インタビューの後編を掲載する。(編集部)
「良い仕事」の条件を提起して
(社会運動の関心の)当面の焦点は反貧困になるでしょう。ぼくとしてはオランダモデルなりを参考に、「濫費型社会」などの、21世紀に我々が直面している人類史的な問題も同時に問われているというところに力点を置いています。食住衣のベーシックな部分を連帯原理で闘い取らないといけない、これは無条件にそうなんですが、しかし同時に、その背後にある「豊かさ」をどう読み替えていくのかという問題だとか、仕事の分かち合いという連帯の問題だとかも考えていかないといけないんじゃないかと思います。
仕事づくりの取り組みを見せていただくなかで、「良い仕事」とはどういう仕事なのかを考えていかないといけないと思っています。自分たちで(仕事を)作ると、自分たちで(責任を)抱えないといけない。これは(逆に)アソシエーションのいいところじゃないかと思うんです。体制の中だったら、全部自分たちだけで解決できるわけではないと思いますが、アソシエーションだと他人事にはできなくなります。そういう矛盾を抱えながら、良い仕事というものを模索することが大事です。
一日働いて、いくらもらえるのがよい仕事なのかとか、フェアトレード運動とか産直運動にあるような、市場によらない価格決定だとか。最低限の生活保障のためとしてフェアな価格というものをこれくらいにしましょう、とか。なかなか難しいですが、 自分たちで様々な労働条件を、いわば自己責任で決定しないといけない。それは会社のような官僚システムとは違う、参加型の仕事場を構築しないといけないわけですから、これも良い仕事の条件のひとつだと思うのです。アソシエーションやNPOの肝心な部分は、自己統治で仕事を再生産していくことです。