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更新日:2008/12/29(月)

[コラム] 山田洋一/911真相究明フォーラム総括

自らの立場も含め、批判的に検証

フォーラムの目的である「事実と推測の腑分け」は、十分に行えたとは言い難い。WTCビルの崩壊の理由・ペンタゴンへ突撃した飛行物体の謎・ユナイテッド93便墜落の是非など、どれ一つとっても付き合わすべき事実は膨大で、わずか1日のフォーラム開催でできることでもあるまい。

ただ、大阪フォーラムでは、米国政府公式発表と共に真相究明派の主張をも批判的に検討しようとしたことは、試みとしては間違っていなかったと今も思える。

メインゲストであるグリフィン氏の主張には、同調できる部分はたくさんあったが、首をひねらざるをえない部分も少なからずあった。ペンタゴンの穴から発見された旅客機残骸について、「(ブッシュ政権が)偽の物証を残すこともあり得る」との氏の説明がまかり通ってしまうなら、事実確認作業そのものが無意味になる。

真相究明派は、公式発表の矛盾点を突き、批判するレベルでは、「正しい」のだが、「何が起こったのか?」を言い出した途端に、無理な推論や解釈をせざるをえず、真相運動批判派からの批判に晒され、自ら墓穴を掘りつつあるとの印象を持った。事実の調査と説明責任は米政府にこそある。真相究明派は、わからないことは「わからない」と率直に表明する方が、信頼を得られるのではないか。

ただし、こうした混乱がもたらされた最大の原因は、ブッシュ政権が十分な調査を怠り、7年も経ちながら米国市民や真相究明運動が投げかけた様々な疑問を一掃するほどの説明を行っていないことである。

「テロとの戦い」に事件を利用した統治機構

N・チョムスキーは、陰謀論に関して次のように語っている。「アメリカ政府は911の悲劇を利己目的に利用したという標準的説があるが、それは的を得た説で、当然あり得ることである。私もそのことは指摘した。米国を含むすべての権力システムはこの事件を利用する」。

911事件は、ブッシュ政権のみならず世界中の抑圧者が自己利益のために利用した。ロシアは、チェチェン弾圧に、中国はウィグルやチベット弾圧に、イスラエルはパレスチナ弾圧に利用している。テロの実行過程やテロ組織の実態は、不明で曖昧な方が、国民に恐怖を植え付けやすい。ブッシュ政権は、敢えて情報を小出しにし、永遠に続く「テロとの戦争」を正当化する道具にしているのだ。

また重要なことは、こうした抑圧的政府は、自国民に対しても監視の目を強め、自由な論議や活動を封じ込めようとしていることである。米国で愛国法が通過し、日本でも「反テロ」を大義名分とした警察権力による個人情報集積システムが構築されている。「他民族を抑圧する民族は決して自由たり得ない」という先人の言葉を思い出すべきだろう。

こうした国家が行う「テロ」行為や監視システムにこそ、注目し、批判し、反対することが重要だ。それは、紛争地域の平和のみならず我々自身の平和と自由を守る闘いでもあるからだ。政治権力の公式発表を鵜呑みにすることなく、何が事実で、その根拠は何なのかを問う市民の側の情報収集・分析能力こそが重要である。こうした意味でも真相究明運動が提起し蓄積してきたことは、大きな意義があったと言えよう。

きくちゆみさんは、「ひとりひとりがメディアになろう」と呼びかけている。自分で情報を集め、分析し、結論を引き出そうとする営みの中でこそ、国家に操作されない自立した市民は生まれてくる。公式発表は言うに及ばず、反対する社会運動の側の主張をも批判的に検証することは、そうした社会運動そのものをも鍛える。人民新聞社もそうしたメディアの一つとして、自らの主張も含めて批判的に検証する重要性を学んだ。

最後に今回のイベントを通して、私は、真相究明派の主張のすべてを自信を持って紹介することはできなくなったことを率直に表明したい。(人民新聞編集長)

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