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更新日:2008/11/27(木)

[海外] パレスチナ/神話化された境界を解体する道を
アリ・アブニマハ(ジャーナリスト、「電子インティファーダ」設立者・執筆者)

編集部より

9月18日、パレスチナ・センター(ワシントンDC)主催で「第1回エドワード・サイード追悼講演会」が開かれ、アリ・アブニマハ(ジャーナリスト、「電子インティファーダ」設立者・執筆者)とアヴィ・シュライム(ロンドン大学国際関係論教授)が、『二国解決か一国解決か』というテーマで、それぞれ講演を行った。前者は一国解決主張者で、後者は二国解決支持者。以下はアリ・アブニマハの講演の抜粋・要約。

分割は悲惨な結果を招く

4年にサイードは、「我々は新世界秩序のもとで生きているからプラグマティックで現実主義的であるべきで、民族主義とか民族解放などの古いイデオロギーを捨てるべきであるという言い方は、まったくナンセンスである。イスラエルや米国のような外国が一方的に何が現実であるかを決定して押し付けることはできない」と書いているが、私はそれを現代流に翻訳し、「いかなる外国も我々の未来をかくあるべきと一方的に決める権利を持っていない。我々は、我々が住みたいと思う未来を建設するために、もっと大声で主張すべきである」と言い換える。今日は一国案の主張というより、二国案の不十分さについて語ります。

私が一国解決案を提起して以来、二国解決の方が実現可能で、自然で、当然の帰結だという主張を再三聞かされてきた。そういう主張の根底には、1947年の国連のパレスチナ分割決議があり、同一の地に対して主権と自決権を主張する、2民族の敵対を解決する手段としては、「最善とまでは言わないが、よりマシな悪だ」という考え方がある。

しかし、分割から生まれるのは、人種的に同質な調和のとれた二国家ではなく、むしろ異人種再編国家である。それに、アイルランド、インド、元ユーゴスラビアの例に見られたように、分割は内乱の終結をもたらさない。むしろ一般の人々ばかりか紛争そのものを再編成し、両国間及び両国内でじくじくといつまでも続く冷戦を生み出し、この再編を維持するための暴力連鎖が続く。

さらに、分割には様々な形の民族浄化、強制移住や排除、同化強制が、自由で民主主義的国家の「基準」の名のもとに行なわれる。「専門家たち」は長年知恵を絞ってきたが、まだこのような悲惨な結果を招かないような分割のあり方を見つけていない。

しかし、米国では地域紛争解決手段として分割が世界の番人たる米政府に進言されることが多い。しかも、民族浄化を公式に認める提案である(ただし、移動トラックの提供など、「人道主義的」配慮がなされているが)。この根底には、紛争の原因を民族的アイデンティティの和解不可能な対立とし、だから分割しかないという考えがある。

しかし、近年、民族的価値観と権利を支持する運動に従事する活動家や有識者は、分割をしないで、あるいは以前の分割や民族浄化が作り上げた境界を解体しながら、民族対立と神話化された紛争を終わらせる解決法を模索するようになっている。

二国分割をしないなら、どういう一国にすべきかが議論になる。統合主義(integrat-ionism)とか共同社会主義(consociationism)などの用語が飛び交っている。北アイランド、キプロス、前ユーゴスラビア、スリランカなどではそういう議論が盛んであるが、パレスチナとイスラエルではまだ少ない。もっとも近年は増え始めてはいるが。エドワード・サイードはこの議論を復活させた功労者の一人といえる。

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