[社会] 橋下教育改革を超えて〜今こそ活かせる困難校での実践の蓄積
大阪府高等学校教職員組合 近藤美登志
就学援助率が高い大阪
大阪の教育の現実を見る場合、まず、就学援助率の高さを指摘しなければならない。すなわち経済的困難を抱える生徒が多いという現実だ。都道府県別では、大阪府が最も高く、27・9%。東京都=24・8%、山口県=23・2%と続く。
経済的貧困の問題は、府立高校では、授業料減免を受ける生徒の多さに表れている。右表に見るとおり、2005年には、26・5%、すなわち4人に1人が減免を受けている。
06年に減少しているのは、新たな減免制度が導入されたためである。それまで、所帯ごとの総所得(年収)によって対象を確定する制度であったものを、市町村民税所得割非課税世帯(均等割のみ課税)と児童扶養手当の受給者が対象となり、生活保護世帯はこの制度から除外され、保護費で給付されるようになったことが大きな要因だ。貧困家庭が減少したわけではない。
経済格差が拡大するなか、全ての生徒に教育を保障する取り組みがより一層重要となっている。
中退問題にみる「経済格差」
次に中途退学と貧困の密接な関係を指摘したい。大阪には、約140校の府立高校があるが、そのうち退学者が5%以上の高校、すなわち1学年で40人以上退学する高校が35校ある。いわゆる「困難校」だ。府立高校退学者の総数は約3000人なのだが、この35校の退学者が全体の71%を占める。
府立高校には学校間格差が存在しており、いわゆる「進学校」と「困難校」が序列化されてしまっている。大阪高教組は、上位校を優遇し、序列を固定化するような政策・措置に反対してきたが、一度、学校の序列が作られると、悪循環に入り、固定化されてしまう。
これら中退者が多い高校の授業料減免率は高く、明らかな相関関係が見て取れる。つまり保護者の収入が高いほど「進学校」に入学する確率が高く、親の収入が低ければ、「困難校」に進んで、結果として高校を中退してしまうことが多いという危機的状況だ。
ただし、経済格差と困難校の相関関係は今に始まったことではない。昔からあったこうした教育格差が、ここ数年見えやすくなってきたということだ。