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更新日:2008/10/31(金)

[反貧困] これからの反貧困運動を提言
──インタビュー:生田武志さん(フリーターズフリー/野宿者ネットワーク)

経済的貧困と関係の貧困に対抗するネットワークを!

不安定就労問題や貧困問題は、女性問題抜きには語れません。フリーターの6割が女性であるし、パート労働もほとんどが女性であることを考えると、不安定就労問題は事実上ジェンダー問題だと言えます。

雇用の不安定化が「問題」としてクローズアップされてきたのは、男性、特に高卒・大卒男性が不安定雇用で貧困化してきたからですが、女性は、元々不安定就労と低賃金に置かれてきました。したがってジェンダー問題を抜きにした貧困問題の解決策は、無効だと思います。

さらに女性の貧困問題については、「103万円の壁」(所得税の配偶者控除の基準額)など法制度の問題や、男性正規労働者と専業主婦というモデル家族を基準にした労働形態に根源があります。つまり@企業の労働形態、Aそれを支える法制度、Bそしてそれに見合う家族形態の3つの連携で、社会が形作られてきました。

この仕組みが綻びを見せ始めているのです。しかし、「元に戻せばいい」わけでもないので、新たなモデルを作る必要があります。反貧困運動は、ジェンダー問題を中心にした「家族問題」に踏み込まないといけないと感じています。

経済の貧困と関係の貧困

テント村の住人が生活保護を受けてアパート生活を始めると、仲間との関係が切れて地域でも孤立してしまい、「一日誰とも話さない。ずっと部屋でテレビを見て暮らしている」という人がかなりいます。

アルミ缶集めなどの生活の「はり」や人との「つながり」がなくなり、アルコール依存に陥ったり、急に病気になって入院したりというパターンも多くあります。本当にこれで良かったのかと考え込んでしまう場面にたくさん出くわしました。これらは、経済の貧困は生活保護でとりあえず解決したものの、関係の貧困になったことを意味します。

また、北村年子さん(フリーライター。著書に『大阪・道頓堀川「ホームレス」襲撃事件――弱者いじめの連鎖を断つ』(太郎次郎社)ほか)は、「『ホーム・レス』を、安心できる『家や居場所がない状態』と捉えるなら、野宿者を襲撃する若者は『心のホームレス』と言える」と語っています。「現代の貧困」の典型は、「経済の貧困」と「関係の貧困」が重なった状態だといえます。

湯浅誠さん(反貧困ネットワーク、NPO「もやい」事務局長)は、「貧乏と貧困とは違う」とも言っています。彼は5重の排除=@教育課程からの排除、A企業福祉からの排除、B家族福祉からの排除、C公的福祉からの排除、D自分自身からの排除、を説明した上で、「貧困」とは、単にお金がないだけではなくて地域や家族が助けてくれない状態、あるいは「溜め」のない状態と言っています。

貧困を経済的側面だけで捉えると、お金を持っている人にとっては他人事になりますが、「関係の貧困」を指摘することで、社会全体の問題として考えることが可能となります。正社員として働いていても、職場の人間関係が希薄であったり殺伐としてイジメが横行しています。家庭や学校も「関係の貧困化」が進んでいます。

欧州では、貧困問題を社会的排除の問題と捉え始めていますが、日本語では、「関係の貧困と経済の貧困」として説明するのがわかりやすいと思います。

関係の貧困化と経済の貧困化は、相互に因果関係を形成しています。秋葉原事件の加藤容疑者にしても経済的貧困と同時に、自分の居場所や尊厳がないことが事件の背景だったようです。

「経済の貧困」と「関係の貧困」に対抗するネットワークが必要とされています。自分と他者の尊厳をともに尊重し、生活の多様性を実現していくネットワークです。

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