[コラム] 足立正生/グルジア、アフガン、パキスタン…中近東で始まった一連の厄災を問おう
はじめに
今、中近東各地で局地戦や内戦の危機が続き、地域の人々の上に大きな厄災として降りかかっている。
それは、決して新しい時代に適応する社会建設に向けて起こっている地殻変動ではなく、非人間的なグローバリズムの利益追求の野望、その番頭格の米欧政権が地政学的な再編攻撃を企んでいるからである。
もちろん、その主犯は、任期切れ直前の米国ブッシュ政権とネオコン的な米国の産軍資本である。アフガニスタン制圧支配による地下資源の安定確保、イラク石油資源の全面収奪計画が行き詰まり情況になったのを見て、むしろ中近東一帯を一括りにした破壊再編へと戦略拡大しようとする野望が顕現しているのである。
そして、それらのことごとくが一繋がりになって地域全般=パキスタン、アフガニスタン、カスピ海から黒海沿岸諸地域、イラク、レバノン、そしてパレスチナの平和と安定に多大な悪影響を与えている。
冷戦再編強化としてのグルジア問題
まずはじめに、グルジア問題。北京オリンピックの開催日に合わせて、元CIA要員による親米政権=アシュカビリ大統領政権に部族問題で緊張していた南オセチアへ挑発攻撃をかけさせ、ロシアの過剰反撃を引き出した。これを待っていたように、米欧は一斉に「冷戦体制に後戻りするのか!」とロシアを声高に批判し、対立緊張を煽って直接介入を策した。
これは元々、米欧が近東一帯の埋蔵資源の確保を計り、「対イラン防衛」と強弁して旧東欧から黒海地帯にまで配備しているミサイル迎撃システムの有効性と必要性を強調する為であり、旧来の冷戦対峙への再編必要性を強調する為の企てである。
つまり、ロシア+イランを仮想敵にしたミサイル迎撃網を冷戦システムの再編強化として作っているのである。
凶暴化するアフガン占領軍
次いで、アフガニスタン。反テロ戦争展開が逆に反米テロ活動の国際化を招き、多国籍軍の戦術展開が膠着状態で泥沼化している。これは、米国主導の多国籍軍の 誤爆 軍事作戦の死傷者が一度に100人を超えるケースが頻発していることを見ても明らかだ。
タリバーン系と旧地域軍閥が共同する多国籍軍+政府軍への攻勢が各地で激化し、その煽りで、日本人NGOメンバーが誘拐殺害された。
この事件を、「アフガン全土の治安の悪化」という一般論に帰し、NGO活動の難しさを指摘して終わるのは方向違いである。根源には、占領支配の成果を求めて焦る多国籍軍が疲弊して凶暴化し、モラルを失った暴虐が蔓延しているのである。
こうした中、占領軍への給油活動を継続しようとする日本政府と自衛隊の方針が、日本人敵視の原因を作っている。NGOメンバーを殺した直接の犯人はタリバーン系勢力だが、そうさせているのは「反テロ戦争」の名でアフガン全土を破壊し住民虐殺を繰り返している米国であり、「給油活動継続」で参戦している日本政府であることこそ、問うべきである。