[社会] 命を食い物に 介護業界に投資する外資系ファンド
生命を金儲けの手段にする金融資本・大企業
近年、介護業界に投資する外資系ファンドが急増している。
業界最大手のニチイ学館(介護事業売上高796億円(07年度))では、発行済み株式の所有者のうち外国法人等の占める割合は、05年3月に10・59%だったものが、08年3月には23・86%に急増している。同じく大手の(株)メッセージ(介護部門売上高217億円(07年度))は、05年3月の3・93%から07年3月には15・44%に伸びている(各社有価証券報告書より)。投資しているのはJPモルガン・チュースやノーザントラストAVFCといった名うてのファンドらだ。
介護サービスの市場規模は、2000年実績の3.6兆円が09年には8.8兆円、15年には10・6兆円まで拡大する見込みという。((株)ニチイ学館インベスターズガイド2007)。成長産業に投資することで利ざやを稼ぐことだけが外資系ファンドの狙いなのだろうか。
車の両輪
「コムスンの一件以来、自己資本比率が低下していますね」―。こう背景を指摘するのは、本紙で『バリアのない街』を連載するケアワーカー、遙矢当さんだ(注1)。
介護業界各社は厚労省にせっつかれてコムスンを買い取ったものの、地代家賃発生や買収コストの償却等の影響により、ニチイ学館では営業利益が半減(07年度)するなど、厳しい影響を与えた。47都道府県に事業分割した訪問介護事業でも、「欲しい地域とそうでない地域とあったが、セットで買い取らされた」ことが営業に影響を与えた。06年の介護保険制度改正以降、軽度利用者の「介護予防」への移行に伴う利用者減などの影響もあって、各社の体力は削られつつあるのが現状のようだ。「また業界再編もあり得ますよ」と遙矢当さんは言う。 「医療の規制緩和と車の両輪になっていることに注意が必要です」―。こう遙矢当さんは指摘する。医療制度改革といえば、政商・宮内義彦(オリックスグループCEO、規制改革・民間開放推進会議元議長)が強力に推進した施策のひとつで、混合診療(注2)と株式会社の参入を強く主張していた。
これまで病院経営は公益性の観点から医療法人など特定法人に限られ、株式会社などの営利団体は参加できなかった。だが宮内会議のテコ入れで、特区での規制解除など一連の医療制度改革でその壁に穴が開けられた。特区での株式会社による病院経営参入は一件にとどまっている(かながわバイオ医療産業特区)ものの、宮内会議を引き継ぐ規制改革会議(議長・草刈隆郎・日本郵船会長)は「全国における取扱いなどについて更に検討を進める」としている。
また、収益事業も行うことのできる社会医療法人への移行を目指す動きも本格化しているという(「エコノミスト」08・8・26号)。
オリックス
宮内の君臨するオリックスは、医療機器のリースや保険事業を介して病院経営への支配力を強める一方、本格的な病院経営にも手を出し始めている。PFI方式で設立された高知医療センター(注3)では、オリックスを代表企業とするグループが設立した特定目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ」が30年間という長期にわたり高知市とPFI契約を交わした。契約金額は2131億円に上る。
かながわバイオ医療産業特区で営業している国内唯一の株式会社診療所「セルポートクリニック横浜」を運営するのは、(株)バイオマスター社。同社の主要株主にもオリックス傘下のオリックス・キャピタルが名を連ねている。ちなみに、美容整形の専門診療所であるセルポートクリニック横浜の料金表によると、豊胸手術が300万円、顔のシワ取りが140万円、全て保険外診療だ…。
いずれにおいても、オリックスは膨大な利益を得ることだろう。