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更新日:2008/08/16(土)

[海外] アメリカ/原油高騰・郊外に広がった米国中小都市の苦悩
──ノースカロライナ州立大学ローリー校講師 植田恵子

生活に不可欠になった車

前回は中小都市のスプロール化の歴史について述べた。今回はスプロール化が生んだ街に住む私の経験も含め、このような街がガソリン依存から脱却できるのか、考えてみたいと思う。

私の家は典型的なスプロール化した郊外住宅地域にある。私の職場である大学からは遠いのだが、子供の学校や夫の勤め先を考慮し、今の家を選んだ。引っ越しした9年前は、イチゴ畑、林、農場が広がって、「こんな田舎に住むのか」と思ったものだ。しかし今ではイチゴ畑も林も消え、7000件程の巨大家屋の群れが広がっている。渋滞を解消すべく、あちこちで道路拡張工事が急ピッチで進められ、ノースキャロライナ州は、過去20年間に森林の10%を開発で失った。

街が拡大すると、生活に必要な物が身近な所では手に入らなくなり、走行距離は伸びざるを得ない。

距離感を掴んでもらうために、私の日常生活を描いてみよう。職場まで片道14マイル(22・4q)、土曜日の子供の日本語補習校まで16マイル(25・6q)、日曜日の教会まで14マイル(22・4q)、子供のピアノレッスンが10マイル(16q)。豆腐を買いにアジアマーケットまで行けば8マイル(12・8q) 。本屋までが7マイル(11・2q)。

周りの人にガソリン給油頻度を聞いてみた。主婦ですら最低週1回だ。母親は、子供たちの送り迎え、放課後の学校活動、音楽、スポーツなどの習い事でフルに車を活用する。週末の対外試合やコンクールとなれば、泊りがけの遠征となる。安いガソリンをがぶ飲みできるからこそ可能な生活だ。

実用にならない公共交通機関

では、車生活から公共交通機関への移行は可能だろうか?

人口密度が1平方qあたり860人(比較・東京5700人)と低く、97%が車通勤者であるこの街にもバス路線はあった。私は一度、家から大学までバスを使ってみたことがある。自宅から最寄のバス停まで車で15分。そこから朝晩だけ1時間に1本出るバスに乗って隣町まで30分。大学のキャンパス近くで下車して研究室まで歩くと30分かかった。通勤時間は実に2時間弱。車なら25分の距離だ。路線を増やし、各バス停に駐輪場、駐車場でも作らない限り、バスが実用的な乗り物にはなりえない。

この地域では1996年に通勤電車建設計画が立案され、2006年までに、空港・4つの近隣街とテクノロジー、医療医薬産業地域を電車で結ぶ計画が進められていた。大学キャンパス内にも駅が出来る計画だったから、大いに期待した。しかし、昨秋、米国政府は「人口密度の低さ」を理由に、資金援助を全面却下した。心待ちにしていた私はショックだ。片道4車線の高速道路は、午後3時には渋滞で動かなくなるのだから。

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