[反貧困] プレカリアートは連結・増殖する
はじめに
昨年、対グッドウィル闘争などで注目を集めたフリーターユニオンが今年は、全国で増殖を始めた。昨年のメーデーは、東京(自由と生存のメーデー)・大阪(ビンボー☆メーデー)が注目されたが、今年は、地方都市に広がり全国14ヵ所を貫くゴールデンメーデーウィークとなった。「黄金の旅団」が全国ツアーを行い、各地のメーデーを「連結」したことで、連帯の絆は広がり強化された。
「黄金の旅団」は、4月26日、10人乗りのワゴン車で東京を出発。各地で飛び入り参加を求めながら名古屋・熊本・福岡他14ヵ所のメーデーを分担しながら回った。4月29日、熊本・KYメーデーに合流し、「黄金の旅団」に同行取材した。全国各地のフリーターメーデーを報告する。(編集部)
【フリーターメーデー】「黄金の旅団」が全国を駆け抜けた!
「今日奪われたものは、絶対に奪い返す」。FUF(フリーターユニオン福岡)委員長の小野俊彦さんは、語気を強めた。FUFが呼びかけた「フリーター/貧民メーデー五月病祭2008」は、福岡県警の弾圧でデモ中止に追い込まれた。小野さんは、まとめの集会で「表現の自由に対する弾圧を既成事実化させず、路上を奪い返す」と力強く宣言した。
5月1日、福岡市中央区の駅前公園での集会後、「反貧困」と書いた旗などを掲げてデモに出発しようとしたところ、50名ほどの制服警官が突如現れ、出口を封鎖した。集会前から私服警官10名たらずが集会の様子を伺っており、「いつもとは違う警備体制だった」(FUF・竹森真紀さん)。
小野さん自身も「1週間かけて作った」というピエロ=ドナルド君のコスプレ。ほとんどの参加者が動物の着ぐるみやメイド服・女装のデモ隊で、平和的この上ないものだったが、福岡県警は、「公園から出さない」と通告。公園出口は、デモ隊と警官に加え野次馬が周囲を取り囲み、騒然となった。
デモ隊は「表現の自由を奪うな!」「メーデーを弾圧するな」と抗議。規制の法的根拠を問うて指揮している男にマイクを向けたが、無言。責任者の氏名・階級を問うても無言。警察手帳の提示を求めても無言という、問答無用の弾圧であった。コスプレ集団がいかつい顔の警官達に猛烈に抗議し、指揮官は全く反論できない。この異様な光景は、しっかり通行人の目に焼き付いたに違いない。
FUFはこの日のデモ申請を行わなかった。車道を使うデモは、危険回避のために許可申請をしてきたが、今回は歩道を歩く予定で、「普通に表現の自由を行使したかっただけ」(小野さん)と言う。背景には、ビラ撒き一つにも「許可」を求められ、警察の介入も度々だったからだ。路上は、市民の公共空間。「うるさいという人がいたら、当事者同士が議論すればいい。警察の介入を許せば、表現の自由も自治も破壊される」と小野さんは語る。
福岡県警側は、「道路交通法違反になるおそれがあるので制止した」と説明しているが、竹森真紀さんは、「予防弾圧だ」と批判する。「交通違反のおそれがあるからと、車の運転を規制するようなバカげた行為」と批判した。
今年初めて福岡メーデーに参加したという松村貴嗣さんは、警察の登場に戸惑いながらも、「平和的デモなのに、犯罪者予備軍のようにあつかわれた」と怒る。コスプレ集団へのデモ規制は、「自由な表現への弾圧であり、フリーターへの弾圧である。
「周りの人たちはおもしろがってくれてたし、ビラの受け取りも本当に良かった。予定していたデモはできなかったが、FUFの主張や警察のおかしさは、十分アピールできた」と小野さんは総括する。