[社会] 地震と原発 「安全上の問題はない」と開き直る電力会社
──原発反対・刈羽村を守る会 武本和幸
原発耐震性再評価で否定の断層を一転追認
もうもうと煙を上げながら燃え続けた変電設備。柏崎・刈羽地震での柏崎原発の被害映像は、記憶に新しい。その後の調査で、敷地内は地面が波打ち、段差が生じ、配管の大きなズレも確認された。
地震大国=日本の原発は安全なのか?30年にわたり地震と原発という視点で柏崎現地で反対運動に取り組んできた武本和幸さんに話を聞いた。
武本さんの本業は土木の調査設計、技術士で測量士。阪神大震災以来、活断層による直下型地震の危険性がクローズアップされている。柏崎原発の計画発表の1969年以来、地質地盤地震問題に取り組み、活断層の調査を重ねてきた。柏崎原発の惨状は、武本さんが訴え続けた事態が不幸にも現実化したものだ。
2050年までに8〜9割の確率で起こると言われる東南海地震では、浜岡原発の重大事故が危惧されている。こうしたなか電力各社による耐震性再評価が公表された。電力各社は、原発関連施設の直下や間近を活断層が通っていることを追認したが、「安全上の問題はない」という。本当なのか?(編集部・山田)
「40年は大丈夫だろう」という賭け
耐震性再評価による各電力事業者の中間報告をみると、想定される揺れを建設許可時の1・6倍くらいに引き上げています。想定の揺れは、これで安心という値はありませんが、再評価後の想定が柏崎原発で実測された揺れを遙かに下回っていることは知っておくべきです。
柏崎原発の地下250bに設置された地震計は、993ガルを記録しました。これは、地下の開放基盤面のハギトリ波に換算すると約2000ガルに相当するという議論もあります。
柏崎地震のマグニチュードは、6・8でした。中規模地震です。つまりいつでも何処でも起こりうる地震の規模です。だから全国の原発は、柏崎で観測された揺れ以上を想定するのは当然です。
新しい耐震基準が「中越沖地震の観測値以上」とすれば、それは2000ガル程度にならなければなりません。
ところが東南海地震による巨大地震が心配される浜岡原発でも、想定震度は800ガル。半分以下です。
溝型地震として東海地震・東南海地震や東北・北海道の日本海溝で起こる地震が危惧されています。太平洋プレートが沈み込む福島から北海道にかけての地域には、六ヶ所村核施設・東通原発・女川原発・福島・東海原発があります。フイリピン海プレートの沈み込み上に浜岡原発があります。中央構造線の上には、伊方原発があります。日本海側の原発は、柏崎のような直下型地震がどこでいつ起きても不思議ではありません。つまり、どの原発が最も危険かと聞かれて予言者みたいなことは言えませんが、地震に対して安全な原発は、一つもないということです。