[社会] 浮き彫りになった自治体アウトソーシングの問題点
臨時職員として直接雇用勝ち取る
「人間を入札するな」「自治体がワーキングプアをつくるな」と、3月3日から無期限ストに突入していた派遣社員=本郷玲子さんら5名(武庫川ユニオン尼崎市役所分会)は、「尼崎市臨時職員」として直接雇用を勝ち取り、職場復帰した。
ただし、臨時職員は実質1年未満の雇用しか保障されておらず、安定雇用には、ほど遠い。市側は、「あるべき(雇用の)姿については1年かけて協議する」としており、雇用安定化に向けたユニオンの取り組みは継続される。「派遣労働者の無期限スト」は、全国から大きな共感をもって迎えられ、リビングウェッジの必要性が再認識されるなど、非正規労働運動にとっても画期的争議となった。(編集部・山田)
予想を超える反響と支援
「派遣労働者の無期限籠城ストというインパクトは大きく、予想を超える共感が広がった」武庫川ユニオン書記長・小西純一郎さんの総括だ。籠城テントには1200人の支援者が訪れ、激励ファックスは600通を超えた。
本郷さんらの臨時職員としての採用は、直接的には、2回の入札が不調に終わったことによる。1回目(3月21日)は、派遣大手のフルキャストが落札したが、労組が「争議中の事業所に労働者を派遣してはならない」と定めた労働者派遣法に違反すると訴え、契約辞退を引き出した。2回目の入札(4月7日)は、尼崎市が13社を指名していたにもかかわらず、10社が入札日前に辞退。入札会場に現れた3社のうち2社も辞退を表明し、残り1社の入札は市の予定価格を上回り、不調となった。
2回の入札が連続して不調となったため、尼崎市は入札による人員確保は無理と判断。元職である組合員に臨時職員としての雇用を申し入れた
白井文尼崎市長は、「財政再建」を掲げ、民営化・アウトソーシングを強力に進めてきた。今回の争議に対しても財政再建路線の堅持にこだわり、担当部局からの「収束案」をことごとく拒否したために争議は長期化した。
そもそも本郷さんらが働いていた市民局は、偽装請負の是正勧告が出された直後、「嘱託職員として直接雇用」を市長に提案した。が、白井市長の反対で潰れている。また市民局は、2年目の随意契約についても派遣元であるヒューマンステージ鰍ゥらの契約額アップに理解を示していたといわれる。労組からの要求で、組合員の時給アップを見込んでのものだ。これも白井市長は「随意契約で契約額を上げるのは、公平性・透明性に欠ける」として拒否。競争入札実施を宣言した。このため労組は、安定雇用を求め無期限ストに突入する。