[海外] パレスチナ/経済制裁が「ハマスつぶしの道」という根本的な誤り
──サフワト・カールート(ガザ在住ジャーナリスト)4月1日「ビター・レモンズ」より
クリーンで誇り守るハマス
二〇〇六年のパレスチナ立法評議会選挙でハマスが圧勝して以来、米を中心とする国際社会はそれを元に戻そうと懸命である。最初、ハマスに三条件を呑ませて、パレスチナに関する地域体制枠内に嵌め込もうとした。それが拒否されると、今度は地域体制の枠組みから締め出し、選挙結果を無視する行動に出た。
イスラエルはこの戦略に喜んで乗った。好き放題に殺戮と抑圧をエスカレートするフリーハンドを与えられ、すでに虫の息であったガザ経済生活をガザ封鎖でいっそう悪化させた。追い詰められたガザ住民の怒りをハマスに向けようとする思惑であった。
この思惑は当初、少し成功しそうに見えた。もともと多くのパレスチナ住民は、堕落・腐敗したファタハを罰するためにハマスに票を入れたのだった。しかし、経済封鎖と制裁の影響が厳しくなると、「食卓にパンを準備してくれるなら、堕落政府の方がマシかもしれない」という嘆きが聞かれるようになった。しかし、「ハマスはクリーン」で「ファタハは堕落している」という認識に変化はなかった。結局、この認識の方が嘆きより強かった。
昨年六月にハマスがガザ回廊を武力制圧した後は、国際社会は最初の戦略を修正した。パレスチナ人が二つに分裂したので、アッバス大統領下の西岸地区自治政府に援助金をばら撒いて強化し、ハマスの影響下にあるガザ回廊を孤立させる戦略である。
それから二年が経過した。ハマスを失墜させる戦略は失敗した。それどころか、世論調査では「ハマス支持」が増加しているのである。それにはいくつかの要因が働いている。
一つは、経済制裁は確かに厳しかったが、もともとパレスチナ人は失うものを持たなかった。パレスチナ人は物資的富よりも名誉の方を尊重するという議論が、本当に成立するほど貧しいのだ。だからハマスは、「パレスチナ人の誇り」のシンボルとなりえたのである。