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[社会] 自立を目指す人を弾き出す社会福祉制度
──遥矢当

「これから仕事辞めたら故郷（＝青森）に帰って、自分の生まれた原点を見てみたいと思います」。

三月に入ると私が現在勤めている介護施設に在籍する、二八歳の男性スタッフが辞表を携えてきた。自ら希望して受講していたホームヘルパー一級講習の修了と合わせて、この春介護業界から去ることになった。

彼との出会いは、今年の初旬、彼が施設内にある認知症対応のグループホームから私が担当するケアハウスへ異動してきたことだった。彼は児童養護施設の出身で、中学を終えると様々な職を経て介護の職を選んだ。時に「疑似家族」のような関係が生じる介護の世界に、自分の存在を見出したかったのだという。私は彼に何となくシンパシーが沸いていたのだが、辞意を聞いてガックリした。

理由を尋ねると彼は、介護現場でのストレスが原因で元来の対人強迫観念が再発し、胃腸を壊してしまったという。一旦仕事を辞め、安定した職が見つかるまで療養したいとのことだった。彼は介護未経験入社だったので、資格が取れるまでの間はパート採用だった。さらに私が担当するケアハウスへの異動で、収入が下がってしまっていた。先の事情で彼には身寄りがなく、金銭面でも常に困窮していた。時々彼からは生活面の相談を受けていたが、私の権限ではどうする事もできず、手をこまねいてしまった。