[反貧困] 改正パート労働法/正社員並みの待遇改善は4〜5%のみ
正社員並みの従順と労働もとめる「均等待遇」のウソ
「4月1日から施行される改正パート労働法は、正社員とパート労働者の待遇差別を温存するだけでなく、逆に労働条件を悪化させる可能性もあります」──こう語るのは、「働く女性の人権センター・いこ☆る」事務局長の屋嘉比ふみ子さんだ。
07年4月からの厚生労働委員会における審議会で厚労省は、今回の「改正」で「差別禁止の対象となるのはパート全体の4〜5%」(柳澤厚労相〔当時〕の発言)と予測していた。これだけでも「改正」は名ばかりだ。
「アルバイト・派遣・パート関西労働組合」(あぱけん・関西)の交渉委員・村上洋一さんも、「むしろこの法律で、非正規雇用の低賃金は固定化され、『正社員』と同等の待遇を受けることのできる労働者でも、『正社員並み』にこき使われることになってしまいます」と批判する。
「偽装請負」「偽装管理職」などが大きな社会問題となる中、この「改正パート労働法」で、非正規労働者の雇用は、多少なりとも改善されるのか?(編集部・一ノ瀬)
分断持ちこみ労働者を選別
まず、改正パート労働法では、@職務内容(仕事の内容や責任)、A人材活用の仕組み(転勤・人事異動の有無)、B契約期間の三点でパート労働者を四つのタイプに分ける(表参照)。
正社員との差別待遇が禁止されるには、この@〜Bの条件がすべて正社員と同じでなければならない。しかし、「これらの条件は複雑で、フェアではないのです」(屋嘉比さん)。
「まず、その比較対象となる正社員が問題です」と屋嘉比さんは指摘する。同一の事業所で、パートと同じ仕事をしている正社員のみが対象となるため、正社員がパートと違う仕事をしていたり、同じ仕事をしている正社員でも別の事業所にいれば比較対象外。そのパート労働者には「差別禁止」が適用されない。「欧米では、こうした比較対象の範囲が広くて、同じ会社であれば、別の事業所や、退職した正社員でも比較の対象になるんです」(屋嘉比さん)。
また、Bの契約期間については、簡単に判断できる問題ではない。改正法では「反復契約により無期と同じと判断できれば正社員と同じと見なす」としているが、この点は企業側が反発している点でもある。「これまでの雇い止め裁判では、この『反復契約』が大きな争点となっていて、企業側が『反復契約=無期』と認めるわけがありません」(大阪労働者弁護団・A弁護士)。
だから、企業がこの三点を恣意的に運用(無期雇用を有期に変更するなど)すれば、雇用するパート労働者への「差別禁止」を回避できるのだ。
@〜Bの条件のうち、どれかが正社員と違う、三つのタイプのパート労働者については、いずれも「差別をしない」努力・配慮の義務が課されるものの、罰則がないため、違法・無法がまかり通るのは間違いない。改正パート労働法の実効性は、極めて疑問だ。
「これまでパート労働者に対して、残業代を支払わなかったり、『雇用保険は、健康保険・厚生年金との三点セットでないと加入できない』とウソ(一週間の所定労働時間が二〇時間以上で、一年以上引き続いて雇用される見込みがあれば加入できる)を言ったり、『あんたの勤務態度が良くないから、明日から休め』と言うような企業が、パート労働法改正で改めるとは思えません」(村上さん)。
また、労働条件が細かくなるほど、労働者間で「私は、あの人とは違う」という分断が持ち込まれることになる。「今でも非正規労働者は職場の労働条件の改善について声を上げにくい状態なのに、このような分断が持ち込まれてしまったら、今以上に企業のやりたい放題になってしまいます」(屋嘉比さん)。