[社会] 尼崎市役所女性派遣社員、無期限スト
はじめに
「こんな大騒ぎになるとは思ってもみなかった」。尼崎市役所前で無期限ストライキに突入した本郷玲子さん(三八才)は、戸惑いを率直に語る。三月三日からのストの要求は、雇用維持だ。本郷さんら五名は、ヒューマンステージ鰍ゥらの派遣社員として尼崎市市民課で住民票入力作業を三〜七年行ってきた。昨年二月からの団体交渉で尼崎市は、長年の偽装請負を謝罪した上で、雇用安定化と時給アップについて検討を始めると約束した。
ところが今年二月末の団交で尼崎市は、ヒューマンステージ鰍ニの随意契約を打ち切り、競争入札実施を告げたのである。本郷さんらは、三月末で職場を追われることになる。団交で積み上げてきた約束を全面的に反故にする内容で、本郷さんらが加盟する武庫川ユニオンは、無期限ストを宣言した。
自治体で進むアウトソーシングは、違法な偽装請負を常態化させ、「官製ワーキングプア」を生み出す温床となっている。本郷さんらの無期限ストに激励の電話が鳴り、全国から支援の申し入れが殺到している。(編集部・山田)
年収一五〇万円のワーキング・プア
「五年間、同じ仕事を続けてスキルアップもしている。なのに時給を下げられ、首切りの瀬戸際。我慢も限界です」。二才から小三まで三人の息子を育てている本郷さんの年収は、約一五〇万円。生活保護費以下のワーキングプアだ。〇二年、潟Aールオーエスから派遣されて住民票入力業務に就いた当時の時給は、一〇六〇円。ところが〇六年一〇月の競争入札で現在の派遣会社=ヒューマンステージ鰍ェ落札。移籍した一二月からは、時給が九〇〇円に下がり、貯まっていた有給休暇も取得しないままゼロとなった。
本郷さんらは、〇七年二月、武庫川ユニオンに相談。同労組は、「偽装請負にあたる」として尼崎市に直接雇用を求めた。兵庫労働局からの是正指導もあって尼崎市は、請負から派遣契約に切り替えて、時給を一一八〇円に引き上げたのである。
その後の団体交渉で尼崎市・市民課は、長年の偽装請負を謝罪した上で、@五年間の雇用安定化と、A一四〇〇円程度という数字もあげて時給アップへの検討を約束したのである。
尼崎市が競争入札実施を決めたのは、ヒューマン社が時給アップを見込んで契約額引き上げを求めたのを尼崎市が拒否し、ヒューマン社が契約辞退したためだと尼崎市は主張する。これに対し武庫川ユニオン書記長・小西純一郎さんは、「組合との団交の積み上げを無視しており、責任転嫁だ」と批判した上で、「市民課の時給アップ容認の姿勢が、財政再建を金科玉条とする市長の逆鱗に触れたのではないか」と推測する。