[社会] 沖縄米兵暴行事件/セキュリティ強化へ誘導する町村官房長官
告訴取り下げ招いた週刊誌取材
先々月一〇日、在沖米海兵隊の兵士によって女子中学生がレイプされるという痛ましい事件がおきた。「再発防止」「綱紀粛正」などが日米両政府や県知事たちから唱えられたが、表面上の「反省」や「抗議」が飛びかうなか、一八日にはフィリピン国籍の女性がPAC3部隊所属の兵士にレイプされた。度重なるレイプ事件は、レイプが特定の兵士による個人的な問題ではなく、軍という構造そのものに起因することを如実に示している。
そうしたなか、二九日には被害にあった中学生が告訴を取り下げ、暴行した海兵隊員が保釈された。「強姦罪」は親告罪なので、被害者の告訴がないかぎり起訴することができないからである。現在、兵士の身柄は米軍が拘束している模様。この親告罪という制度は、一度取り下げると再告訴はできず、被害者にとっては非常に厳しいものである。
告訴取り下げの背景には、ある「本土」の週刊誌が、被害者の自宅にまでつめかけるという酷い行為を行ったこと、さらには「家まで送る」という言葉を信じた被害者を責め、本人の自宅もある程度特定できるような内容の記事を掲載したことが指摘されている。被害者は、まさに「セカンド・レイプ」(さらに雑誌編集部の明らかな「沖縄」への偏見)によって深く傷つけられた。
沖縄社会は、相次ぐ米兵によるレイプや不法侵入などの事件によって大きく揺らいでいる。沖縄における議論の展開について、批判的に検討しながら報告したい。
監視カメラ設置への誘導
今回の女子中学生に対する事件を受けて、町村官房長官は繁華街への監視カメラ設置を提案したが、これは昨今とみに喧伝されるようになった「セキュリティ」なるものを求める住民側の危うさを利用し、抵抗を回収するものだ。
もともと監視カメラについては、沖縄市が外務省と商店組合など市内十三団体から設置を促されていたが、プライバシーの問題などから結論は出ていない。犯罪のみならず反基地運動まで監視される可能性も指摘されており、「防犯パトロールの強化」などと同様、監視カメラ設置は批判的に見なければなるまい。
米兵の事件に対する反発と監視社会化の近接という問題は、兵士によるレイプを軍という構造にとって本質的な暴力とせず、単なる「犯罪」としてとらえる傾向をどう解体するのかという課題とも分ちがたく結びついている。統治する側からも住民の側からも出される「綱紀粛正」などは、レイプを「犯罪」として、いわば占領政策におけるイレギュラーなものへと押しとどめる代表的な視点だろう。
住民側に則してみた場合、レイプという暴力に対する怒りが、「犯罪への許しがたさ」「犯罪者への憎しみ」というそれ自体ではきわめて保守的な形をとりうる情動に回収される危険性がある。