更新日:08/03/01(土)
[社会] 緊急時に何もできない介護現場
──遥矢当
立ち往生した早朝の救急車
「三〇分経っても、まだ搬送先の病院が決まりません。また連絡します」──新年を迎えたある日の早朝五時、私は東京都中央区にある現在の勤務先からの携帯電話で叩き起こされた。夜勤者の報告では、「ここ数日、健康状態が良くなかった女性入居者のSAT(動脈血の酸素飽和度)が八〇を切り(*@)、呼吸が荒くなってきたので救急搬送を依頼した」との事だった。
私は、「そろそろ状態の急変は覚悟しなければならないな」とは思っていたのだが、高齢者は、死亡も含めて早朝にトラブルが多い。今回も、やはり早朝だったのだが、一番困るのは、救急搬送の病院が見つかりにくいことである。搬送先が見つかるまで救急車は現場から出発できず、立ち往生となる。出血が多量でも、状態が重篤な場合でも同じだ。搬送先が見つからない為に三〇分以上待つのは、都内でもよくある話だ。結局その女性は、「かかりつけ医」である東大付属病院(文京区)への搬送となった。病院側が、何とか受け入れ体制を整えたからだ。
施設に入居する多くの高齢者は、入居前に「かかりつけ医」を決めている。救急隊は搬送先を探す場合に、まずかかりつけ医に当たる。しかし、「かかりつけ医」が医療機関内にいた場合でも、空きベッドが無ければ断られる。長年通い詰めた病院に、いざという時にあっけなく裏切られてしまう場合がある。
@…健康な人は通常90台後半の値を示す。値の低値が続くと末梢の血流低下などが懸念され、中枢神経系の障害が出る可能性もある。
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