[海外] パレスチナ/アナポリス会議を決裂させてはならない
──ダヴィド・キムヘ(元イスラエル外務省長官)
シオニストにとっての「二国併存案」
昨年11月のアナポリス会議前に、右派系イスラエル紙『エルサレム・ポスト』に興味深い論説が載っていた。和平に関するイスラエル人右派の危惧を表すものとして興味深いので、07年10月18日のエルサレムポスト紙より訳出する。(訳者 脇浜義明)
"2009年、10月"
2009年、10月──二年前にアナポリス会議が失敗したので、二国並存解決案も潰れた。パレスチナ自治政府も解体し、今後パレスチナ人の公式方針は、イスラエルを一八歳以上の住民が誰であれ選挙権を持つ民主主義国に変える、いわゆる一国解決案となった。彼らはそれを「子宮戦争」と呼ぶ。「我々は子宮を通して勝利する。この国ではパレスチナ人が多数派となるからだ」。
かくしてパレスチナ人を世話することはイスラエルの手に戻された。教育、保健、その他日常生活の必要の面倒を見るパレスチナ自治政府がなくなったので、イスラエル政府がすべて面倒をみなければならず、経済的負担が重くなった。ハマスもジュデア・サマリア地区の従順な住民となった。「子宮」はカッサム弾や自爆攻撃よりも強力な武器であると宣言して、イスラエルへの武力攻撃をやめた。
一方世界の市民運動は、イスラエルの「アパルトヘイト」政策を非難し、すべての住民に平等な選挙権を与えよと要求する運動を強めている。世界中のイスラエル大使館の前では、かつてのアパルトヘイト南アフリカ大使館と同じように、毎日抗議集会が持たれている。世界の国々が次々とイスラエル商品ボイコットや外交断絶に踏み切っていくので、イスラエル国の正統性も危うくなる。反ユダヤ主義が再び台頭し、各地ではユダヤ人への襲撃が増加。米国でも、「露骨に民主主義の基本を無視するイスラエルを、何故擁護するのか」という世論に押されて、イスラエル贔屓の米政府の態度も揺るぎ始めた。
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嫌な予想だろう?しかし、一国解決案が急速にパレスチナ急進派の間で支持を広めているのは事実だ。アナポリス会議が失敗したら彼らに有利な流れになるだろう。
現在イスラエルのある種の部分で流布している発想 =パレスチナ人は全員ヨルダンへ逃げてヨルダン国民となり、西岸地区はイスラエル領となるだろうという発想は、お笑い種である。もちろん、いつの日かヨルダンとパレスチナの連邦ができるかもしれないが、それも、まず、パレスチナが独立国家になってからのことであろう。