[社会] 餃子事件・陰謀説が語るもの
パニック状況を奇貨に新自由主義を先導?
ギョーザ中毒事件を受けて、謀略説も含めた奇説・珍説が飛び交っている。暴論も多いが、一考に値する問題提起を読み取ることもできるかもしれない。(編集部)
「ターゲットはJT」説、食品業界に吹く風
日本たばこ産業(JT)と日清食品、加ト吉が進めていた冷凍食品事業の統合が、事件発覚後白紙撤回された。今年四月に予定されていた事業統合が実現すると、売上高二六〇〇億円の国内最大の冷凍事業会社が誕生するはずだった。JTは、食品を新たな事業の柱としてテコ入れし、冷食トップの加ト吉を取り込んで、売上高一兆円規模の「世界の食品メジャー」を目指して積極的な海外展開をすすめる構想を描いていた。
そのJTは、一月三日、日清食品に五%を上限に出資する方向で検討していることを明らかにしていた。これは、日清の約一九%を保有する筆頭株主である米系投資ファンドのスティール・パートナーズに対し、「JTが安定株主となることでスティールの動きを牽制する狙い」と報じられていた(『プレジデント』誌)。スティールの保有比率は、度重ねる追加取得で一八・九九%まで引き上げており、スティールによる日清買収の懸念もあった。
泣く子も黙るハゲタカファンド・スティール・パートナーズ(SPJSF)。明星食品をめぐる日清との買収合戦では三六億円の利益を得た。ブルドッグソースやサッポロビールの買収騒動でも名をはせている。投資額の半分(約四八〇〇億円)を日本市場につぎ込んでおり、その半数近くが食品産業だ。同社は、今後さらに食品業界の再編を引き起こす攪乱要因でもある。
このスティールの介入を牽制したJTへの対抗策として、今回の事件が演出されたのではないか、スティールは未だ日清の買収を狙っているのではないかという説がある。
真偽のほどはともかく、金融の規制緩和とグローバル化を受けて、外資の参入が日本の食品市場や農村、消費者、労働者に与える影響は計り知れない。今後もその動向には注意が必要だ。