[海外] 中東和平国際会議という政治ショー
はじめに
映画『幽閉者 テロリスト』の監督・足立正生氏に中東情勢理解のポイントを解説して頂く。第1回は、「中東和平国際会議」(昨年11月)とブッシュの中東歴訪(今年1月)。ブッシュの中東歴訪は、イラン攻撃に向けた環境作りが目的で、イスラエルが米国に代わってイラン攻撃を引き受けるという可能性も指摘する。
パレスチナの事態は、もはや「紛争」ですらなく、イスラエル政府によるパレスチナ住民への一方的な軍事攻撃である。こうした無法行為を認め、援助を惜しまない「民主主義国家群」も同罪である。
本稿を受け取った直後に、「ガザ地区南部エジプト国境爆破。数万人が買い出し越境」のニュースが飛び込んできた。「こうした自衛行動は、今後頻発・拡大していくだろう」(足立氏)。次回はこの背景について。(編集部)
イスラエルによるイラン攻撃もあり得る
今年は、欧米諸国が一九四八年にパレスチナを分割して「イスラエル」建国を承認してから六〇年になる。その後パレスチナは、度重なる中東戦争でほぼ全土を占領され、パレスチナ人の厄災は現在まで拡大し続けている。
その間、日本を含む世界の諸政権は、パレスチナ人の厄災に眼をつぶるばかりか、イスラエルをアラブ世界の石油資源や市場権益を保持する為に築いた砦として、政治経済的かつ軍事的に援助を肥大化させてきた。
その典型的態度の一つが、恒例となった米国大統領が取り仕切る「中東和平交渉」という政治ショーである。任期終了が迫った歴代大統領は、決まって「自分の任期内に中東和平を実現する」と宣言し、次期大統領選挙のお祭り騒ぎで自分がお役目ゴメンの死に体になるのを恐れ、イスラエルとパレスチナの双方を呼んで結果の出ない和平交渉ゲームを愉しむのである。カーター、レーガン、ブッシュ親父、クリントンらの和平交渉は、何の進展も産まず「米大統領の仲介努力」だけを際立たせて終わった。
現在、イラク占領で混迷するブッシュ息子も、突然「中東和平とパレスチナ建国の実現を試みる」と宣言し、昨年一一月、同調者たちをアナポリスに呼び集めて「中東和平国際会議」を開いた。しかし、その会議には、当事者であるパレスチナ政権(ハマス)が「テロリスト」として除外されており、和平を考える気がないことは明白だった。むしろ混迷が続くアフガニスタンとイラクへの侵略支配を共同するグループの慰労会レベルとなった。結局、EU・国連・ロシア・米国が約束したパレスチナ建国への「ロードマップ」に示された和平交渉の再開を呼びかけただけで、一切の中身が伴わずに終わった。
そこでブッシュ政権は、ショーの続きを、一月九日からの中東歴訪でも演じることにした。しかし、そこで開陳されたのは、パレスチナ問題の解決ではなく、「中東平和には、イラン包囲網こそ必要」というこじつけへの説得旅行だったし、支持取り付けであることが浮き彫りにされた。