[コラム] 有機本業 発行人 五味正彦/いいかげんな出版業界に未来はあるのか?
「表現の自由」や本そのものにこだわりのない出版界
出版(業)界はこれからどうなっていくのだろうか?
新宿のミニコミ書店、模索舎をだいたい一七年、その後、出版のオルタナティブな流通業・有機本屋=ほんコミ社、こちらも一七年程やって、二〇〇五年三月、めでたく引退≠ナき、その後も大きなトラブルもなく、好きなことがよりやれるようになって、二〇〇八年が迎えられ、ありがたいことと、関係者皆さんに感謝している。
小さな会社・組織≠フ運営(人・金の管理の大変さ)にも、ずっと仕事の主な対象だった出版業界にも、ほとほとあいそをつかしきってのリタイア、だから、もう出版界・出販業界・あるいは表現の自由のことなんか考えなくてすむ、とほっとしていた。
しかし、昨年秋からこんな私にも、「今後の出版界はどうなるのでしょう」的質問が又ふえてきた。又というのは、今までもこんな質問が多かった時期が二度程あったからだ。
一度目は一九九〇年代はじめ、世の中にちょっと遅れて出版バブルもはじけた時、二度目は二〇〇〇年代になって、どうやっても「売上が前年以下になるしかなくなって」ということが続くようになって、ではあった。
今後も出版という仕事は続くのだろうか?自分はこの会社にいて大丈夫だろうか?数年後自分が経営している出版社は残っていられるのだろうか?残るための秘策はあるのだろうか?というたぐいのものが多かった。
同じような質問が続けば、こちらも真剣に答えを考えざるを得なかった。九〇年代はじめの時の答えは二つ。一つは「岩波をはじめとする出版社側の取り分減らして、書店で働いてる人の労賃を挙げること」──だって本のことを質問しても答えられる現場のスタッフが管理職になるか、あまりの低賃金(マクドナルドより平均時給で本屋の方が五〇円以上低かった)でやめるしかないというのが書店現場だった。
もう一つは「文化としての出版でなくても商品としての出版物をふやす秘策はある。それは自費出版≠ノ流通してます≠ニいうラベルを貼って商品化すること。そのための方法論はね、とむにゃむにゃとある出版社の新しいプロジェクトの責任者と称する人に自論をしゃべったことがある。いろんな人にしゃべったが、名刺が残っている一人は、「たま出版・某、文芸社プロジェクト」。
そう、今新風舎と並ぶ文芸社という自費出版、商品化会社の一つ、文芸社の母体はたま出版=B時々テレビに出てUFOがどうのこうの言ってる韮澤潤一郎という人は確かこのたま出版の経営人にいたと記憶している。
今回の紙数は終わりつつあるが、多くの皆さん、自分の本を出したいと言う出版界は、こんないいかげんなダメな業界。それでも興味持つ人いれば続編書きますよ。